第1話 百合魔法少女、誕生! ③

〈金髪イケメン神様視点!〉


 やあ皆、百合は好きかい?

 僕は大好きさ!

 おっと、でも、やましい気持ちじゃないよ。

 僕は、君達が神や天使と呼ぶ者に近い、高純度の精神エネルギー体。

 清らかな少女同士の恋愛が発する純粋なエネルギーが……。

 ええい、理屈はどうでもいい!

 とにかく僕は、百合が見たい! 女の子と女の子がイチャイチャするのを見たいんだよ!!!

 だのに、僕の目の前には今! 百合の素晴らしさを理解しない、邪悪な悪魔が!


「お、お前は! 男爵級悪魔、アルダ=ギルズ!?」


「やっと見つけたぞ。もう、逃がさないぜ?」


 豪奢ごうしゃな金髪に、燃えるような瞳の少年悪魔……おっと、男の容姿描写なんてどうでもいいね! ファッ〇ン!!

 こいつは、あの恐るべき悪魔「腐界の女王」の手先。つまりホモだ!


「おい、誤解すんな!? 俺は命令で仕方無くやってるんだからな!?」


「黙れ悪魔め! 人類総BL化なんて、僕は許さない! そんなのこの世の地獄だよ。ヘル・オン・アースだよ!!」


 僕の言葉に、彼、男爵級(悪魔の強さを表すクラスさ! けっこうヤバイよ!)悪魔、アルダ=ギルズは不敵に笑う。


「許さないなら、どうする。俺と戦うとでも?」


「……くっ!!」


 そう、残念ながら僕自身に戦闘能力は無い。物理的肉体を持つ悪魔と違い、ほぼ精神エネルギー生命体の僕には!

 ……だから、百合魔法少女が必要なんだ。


「くっ、今は逃げるしかない!」


「はっ、遅いぜ!」


 悪魔アルダ=ギルズは、その邪悪な能力を解放!

 その能力とは……「触手」! そう、奴は触手を召喚するのだっ!!


「喰らい尽くせ!『暴食の手』よ!!」


「ふ、ふざけるな!」


 空中で必死に触手を避けながら、僕は怒りに震えた。


「触手は、こんな攻撃の為にあるんじゃない! 触手は、触手はっ! 美少女に絡む為にあるんだぞぉぉぉッ!!!」


 おっと、僕はいつでも真面目だよ?


 ※ ※ ※


「ぐわぁぁっ!?」


 防ぎ切れず、僕は地面に、森の中に叩き落とされた!


「きゃぁぁっ!? 何!? 何なの!?」


 僕の目の前には、一人の女の子。この時僕は、まだ彼女の名前を知らなかったけど。

 そこにいたのは、早乙女さおとめ早百合さゆりだった。

 宮野りりなの忘れ物、英語のノートを届ける途中だったそうだ。

 そして、彼女の腕の中には。やがて僕の器となるアイツが。

 クマのぬいぐるみ、ステファニーが抱かれていた。


「き、君! 逃げるんだ!! ここは危ない!!」


 しかし、間に合わない。


「おっと、鬼ごっこは終わりだぜ?」


 触手を引き連れ、悪魔アルダ=ギルズが降り立つ。


「ま、まずいぞ、この展開は!!」


 美少女と、触手。

 ……美少女と、触手ッ!!


「エッチな展開が、始まってしまうじゃないか!?」


「きゃぁぁっ!?」


 やっぱりだ! 触手が、早百合を襲う!


「やめろ! 彼女は無関係だっ!!」


「どうかな? お前が人間の乙女を捜してるのは、知ってるんだぜ?」


 悪魔は、舌舐めずり。


「触手どもに、この女を犯させちまえば……お前が探してる『乙女』が、一人は減るよなぁ?」


 ……ああ、これが悪魔さ。僕が奴等を許せないのが、少しは分かってもらえたかい?


「や、やだぁ! 助けてぇぇっ!?」


 太い触手に手足を拘束され! 無惨に服も破られ! 早百合は泣き叫ぶ!!


「や、やめろぉぉぉッ!?」


 僕に、僕自身に、戦う力が有れば!


「わ、私は! 初めては、りりなに捧げるって、決めてるのにぃッ!?」


 百合な発言。

 ……この言葉で。

 早百合のこの言葉で、僕の覚悟は決まった。


「……全ソウルエネルギー、解放」


 こんな悪魔の所業は。愛の無いエロスは許せない。

 僕は百合の守護者。清らかにして純粋な、至高の愛の護り手なのだから!!


「な、なんのつもりだ!?」


 黄金の光に、悪魔が焦る。


「……決まってるだろ」


 僕は、静かに笑った。


「自爆、さ」


 ……そして僕は、触手を灼き切る為に全ての力を使い果たし。

 クマのぬいぐるみ、ステファニーの中に、魂だけを憑依させた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る