第1話 百合魔法少女、誕生! ④
「英語のノート、忘れたぁーっ!?」
私のばか! うかつ!!
私、宮野りりなは。自宅を目前にして、せっかく早百合とやった宿題の存在を思い出した。
「……はぁ、しかたないわね。取りに戻ろっと」
再び森の道へ。
「あれ? 花火?」
気付くと、上空で何か光が炸裂してる。
おかしいな、七夕祭りは来月……8月なんだけど。
関東三大七夕祭りの一つ、狭山市の入間川七夕祭りは来月2日と3日のはずなのに!
市政60周年を祝う2300発の花火は、来月のはずなのに!!
以上、宣伝でした。郷土愛!
「きゃぁぁぁっ!?」
「この声……早百合!?」
※ ※ ※
「わっ、な、何!?」
森の中、いきなり私の視界を灼いたのは。
とても激しい、黄金の光だった。
「早百合! 無事なの!?」
「りりな!?」
光が消え失せ、親友の姿を目にして。
……私は、絶句した。
「うわぁぁん、りりなぁ!! 私、怖かったよぉ!?」
「だ、大丈夫よ! もう、私が来たから!!」
破れた服で泣きじゃくる早百合を抱き締めながら。
私は、きっ! と。
犯人とおぼしき男を、睨んでやる。
「あなたね? 早百合に乱暴したのは!? 絶対に、許さない!!」
「……許さなかったら、どうだってんだよ?」
その少年から。怒りのオーラが立ち上るのを、視た。
「今の自爆は、俺も少しびびったぜ。脅かしやがって」
邪悪に唇を歪め、
「この落とし前、どう付けてやるかな。とりあえず、てめぇら全員……」
……そして。
「触手どもの、餌だァァァーッ!!」
私、宮野りりなは。「悪魔」の存在を知った。
「きゃぁぁっ!? 何、何なのよこれぇっ!?」
蛇? いいえ触手!?
とにかくうねうねキモいのが、私達を取り囲む!
「り、りりな……!」
歯をガチガチと震わせる早百合へ、必死に大丈夫だよ、とささやきながら。
……私も、震えていた。
何なの、これ!?
「
思わず叫んでしまった、その時。
「……大丈夫だよ」
優しく、私達に語り掛けたのは。
……ぬいぐるみ。
……クマのぬいぐるみ?
「ぬいぐるみが、喋った!?」
「落ち着いて、宮野りりな! 説明は後だよ!!」
触手はなおも、うねうね迫る!
「今! ここに! 百合魔法少女の資格を備えた君が現れ! 女の子もいる!! これで万事解決さ!」
「百合魔法……なんだって?」
ステファニー、とか早百合が呼んでたぬいぐるみは、私にはさっぱり分からんことを熱く語る。
「百合魔法少女! それは全ての魔法少女を超越した、最強の存在! 神にも等しい、聖なる愛の護り手さ!」
「だから、百合って何!?」
「りりな、百合っていうのはね」
さっきまで泣いてたのに、早百合が解説!
うっわ、瞳キラキラだよ!?
「女の子同士で、愛し合うことだよ♪」
……は? 何それ、何それ!?
このピンチとどう関係あるの!?
とどめを刺すように。ぬいぐるみが、「契約」を告げた。
私の、運命の契約を。
「さあ、女の子同士でキスして、百合魔法少女になってよ!」
「……ごめん、わけがわからない」
当然の反応だよね?
なのに、
「シャラップ! 口答えするな! いいから早く百合キスして、最強の力を手に入れてよ! 尺が足りなくなるだろ!? 第1話から魔法少女が変身しないなんて放送事故だよ前代未聞だよ!!」
「尺って、何!? 何の話なの!?」
「……ねぇ、りりな」
その時。早百合が顔を真っ赤にして、申し出た。
「キス、しようよ」
「え、えぇぇぇぇ!?」
どうしたの? おかしくなっちゃったの、早百合!?
「りりなは、私とじゃ嫌?」
ふぇぇっ!?
だって、女の子同士だよ!?
でも。羞じらう早百合は、女の私から見てもすっごく可愛くて、魅力的で。
何故だか私の胸も、ドキドキしてくる。
「わ、私、初めて、だよ?」
「うん、私も」
そして、にこっと笑って。
「ふふ、お互い忘れられない、ファーストキスだね♪」
「……あ」
ハートが、きゅんきゅんした。
(私、早百合と……)
キス、したい。もう止められない!
……ちゅっ。
「き、キマシタワー!?」
ぬいぐるみが叫んだ!
その瞬間!!
黄金の光が! さっきとも比較にならないほど熱く! 激しく! 気高い愛の光が輝く!!
夜空を裂いて、闇を裂いて!
日本中、世界中、いいえ宇宙の全てを照らす愛のビッグバンとなって、神聖な魔力が
そう、今ここに! 私は生まれ変わった!
新しい私は、私の名は!!
「聖なる愛の守護者、百合魔法少女マジカル☆リリィ! 人類まるごと、百合ん百合んにしてあげる☆」
《第2話へ、続くッ!》
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