第1話 百合魔法少女、誕生! ②
一気に時間は飛んで、放課後。
「ねぇ、りりな。今日、私の家に寄っていかない?」
「ん、良いよ。今日は部活無いし」
ちなみに私は、剣道部。残念ながら部としては弱小で、活動も部長の気分次第……。
「ところで、りりな?」
「今夜、両親いないんだ♪」
「うん、それで?」
……沈黙が流れる。
「もう、りりなは鈍いんだから!」
「え? え? 何で私、怒られたの!?」
時々彼女は、分からないことを言う。
※ ※ ※
私、
西中のアイドル、清楚なお嬢様は、部屋もイメージ通り。
ピンクの壁紙とか、カーテンとか。ぬいぐるみがたくさん飾ってあったりと、全体的に女の子女の子して可愛らしい。
……くんくん。何だか、良い匂いもするし。
(一つだけ気になるのは、あの本棚なのよね……)
私が来ると、いつも布が被されていて、異様な存在感を放っている。
以前に一度、見せてと頼んだのだけど、
「見ちゃだめぇ!? く、腐ってるから!?」
見たら絶交だよ、とまで、激しく拒否された。
(うーん、腐ってるって、一体?)
本が痛んでいるってこと?
変な臭いは、しないけどなぁ。
※ ※ ※
「じゃーん、紹介するね。ステファニーちゃんだよ!」
ぬいぐるみ大好きの早百合が私に見せたのは、新品とおぼしきクマのぬいぐるみ。
そう、クマのぬいぐるみ。私にとって運命のパートナーとなるあいつ。
この時はまだ、「中身」は入ってない、正真正銘の、ただのぬいぐるみだ。
「ほら、りりな。ステファニーちゃんにキスしてあげて?」
「もう、子供っぽいよ?」
早百合は私の唇に、ぬいぐるみの口を押し付けてくる。
そして、自分もぬいぐるみにチュウ。
「えへへ、りりなと間接キスだぁ♪」
「……そして、変態っぽいよ?」
※ ※ ※
一緒に宿題をして、早百合たっての希望で、一緒にお風呂に入って。
家路に着く頃には夜7時過ぎ、辺りはすっかり暗くなっていた。
「早百合の家で、うちに電話しとけば良かったかな……?」
携帯、スマホの類いは、「まだ早い!」と持たせてもらってない。
門限が有る訳じゃないけど、怒られるかも?
「仕方ない、急ぐか……」
私は、近道を選択した。
私の住む街は、埼玉県の
あの「となりのト〇ロ」のモデルになったとも言われる丘陵も近く、今でも都心から電車で一時間とは思えないほどの自然が残っている。
タヌキ出るからね、タヌキ。まじで。
そんな訳で、私が選んだ近道というのも、結構な森の中。
季節は初夏、緑茂る夜の森……。
さすがにト〇ロは出ないだろうけど、暗い時に行くのは、勇気が要るかも。
「ええい、女は度胸! 行くわよっ!!」
気合いを入れて、私は森の道を駆け出した。
※ ※ ※
「さあ、早く彼女と接触しなくては!」
この時、私の知らない、森の上空では。
翼を生やした金髪イケメンが、私を探していた。
「この街にも、悪魔の手は伸びている。一刻も早く、覚醒させるんだ。人類の希望を、百合魔法少女を!!」
「そうは、させねえよ」
「お、お前はっ!?」
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