第1話 百合魔法少女、誕生!

第1話 百合魔法少女、誕生! ①

「遅刻、遅刻するぅー!?」


 お約束でごめんなさい!

 私は宮野みやのりりな、14歳。埼玉県某市の公立中学校に通う、ごく平凡な女子中学生です!

 私が通う中学、公立西中学校は、名前で「わっ、平凡!」って分かる通りの、ごくごく平凡な中学校。

 特殊能力者が集められたりもしないし、人外が通ってたりも(多分)しない。

 もちろん、女の子同士で「ごきげんよう♪」なんて言わない、ごく普通の学校。

 そもそも共学だし!


「解説している場合じゃない! 今日遅刻したら……!」


 今日は生活指導の先生が、校門を見張っているはず!

 「遅刻者には、死を!(宿題十倍)」がモットーの先生だからね。負けるもんですか!

 着替え一分、食事十秒!


「行ってきまーす!?」


 牛乳だけ飲んで、後はパンをくわえながら坂道をダッシュ!


「よっしゃ、勝利よ、勝利が見えてきたー!!」


 ええ、このペースなら、ホームルームに間に合うし!

 と、坂道を駆け上ったところで、親友の早百合さゆりに出会う。


「おはよう、りりな。朝から元気ね」


「おっはよ、早百合! 今日も美人!」


 ダッシュの勢いのまま、早百合をダイビングハグ!


「うん、今日も、石鹸の良い匂いですな!」


「ちょ、ちょっと、りりな。恥ずかしいよ……」


 スキンシップ過剰? ううん、早百合が美人なのがいけない!

 我らが西中のアイドル、早乙女さおとめ早百合さゆり

 容姿端麗、成績優秀なお嬢様!


「はぁ、平凡な学校にはもったいない♪」


 ほっぺに、綺麗な黒髪にすりすり。

 おっと、いけない!


「私、ノーマルだからね! これでもノーマルだからね! どんなに早百合が美人だからって、キスしたいとかは思わないんだから!!」


「りりな、誰に説明しているの?」


 首を傾げながらも早百合は。


「えへへ、私は、りりなとだったら、良いよ♪」


「ふぇっ!? な、何が!?」


「だから、キス。りりな、ちょっとボーイッシュで、かっこいいもん。女子に人気なの、知ってた?」


「な、変な冗談やめてよ!?」


 頬が熱くなる。私はノーマル、ノーマルのはず、なのに!


「ほ、ほら、遅れちゃうよ。ダッシュ、早百合もダッシュしないと!」


「焦らなくても大丈夫よ。ほら、腕組んで行こ♪」


「む、胸を押し付けないでぇー!?」


 早百合の柔らかい感触に、私の心臓がどきどき!

 おかしいな、やっぱり私……。


「ち、違う! 私はノーマル! ノーマルなんだからね!?」


 ※ ※ ※


「見つけた! 百合魔法少女の資格を持つ魂を!!」


 ……遥か上空。金髪に、翼を持つ美青年。

 私達の概念で言えば、天使とか、神様とか、そんな存在。


「良い百合の予感だ! さあ、少女よ、早く! 女の子同士に、目覚めるんだぁーっ!!」


 この変態に「契約」対象者として目を付けられたことを、私、宮野りりなは、まだ知らなかった。

 この時は、まだ。世界の命運を賭けた、戦いの日々が始まったことも。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る