百合魔法少女マジカル☆リリィ

百合宮 伯爵

百合魔法少女、はっじまるよー☆

「さあ、女の子とキスして、百合魔法少女になってよ!」


「……ごめん。わけがわからない」


 ※ ※ ※


 宮野みやのりりな、14歳。一ヶ月前、私は変なクマのぬいぐるみと……「契約」した。


「き、聞いてないわよ!? こんな強い悪魔と戦うなんて!?」


 飛来する氷の矢をかわしながら、夜のビル街を高速飛行しつつ、ぬいぐるみに文句を言う。


「やっと飛翔魔法にも慣れてきたばかりなのに。あんなの勝てるかぁっ!?」


 私の使命。それは、世界を「ある計画」の元に創り変えようとする悪魔達と戦うこと。


「がんばれ! 君が負けたら、世界は、世界は……!!」


 昔話の騎士の、甲冑のような姿の悪魔から逃げながら。ぬいぐるみに叱咤される私。


「君が負けたら、世界はBLで満たされてしまうんだよ!」


「すっごく、どうでもいい!!」


 そう、これが私の使命。大悪魔の一人「腐界の女王」の恐るべき野望、人類総BL化計画を阻止すること!!


「ほんとに、すごく、どうでもいいし! いいじゃん、勝手に満たされれば!」


「そんなこと言わないでくれよ! 人類には百合が必要なんだよ!?」


「単に、あんたの趣味でしょうが!?」


 私に力を与えたクマのぬいぐるみ。こんな姿だけれど、本当は神様みたいなものらしい。

 女の子同士の恋愛……百合を崇め、私に強制してくる変態だけどね。


「わ、わわわっ!?」


 悪魔の氷ミサイルを間一髪避けるけど、勢い余ってビルに激突!

 普通の人間なら、これだけで即死だけど。あいにく今の私は、魔力で護られている。


「くっ、でも、このままじゃ! 逃げてばかりじゃ勝てない!」


 魔力を! もっと魔力をチャージしなくっちゃ!

 けど、その方法は、たった一つ……!


「見て、りりな! 女の子だ! 女の子がいるよ!?」


 事情を知らなかったら、このセリフだけで通報されそう。

 とにかく、私が飛び込んだのは夜のオフィス!

 視線の先には、腰を抜かす、綺麗なお姉さん!


「なりふりかまってられないわ!」


 夜闇を裂いて、悪魔が迫る!


「お、お姉さん! お願いがあります!」


「は、はい、なんでしょう!?」


 見ず知らずの人に、こんなお願い……。

 でも私は、勇気を振り絞って!!


「私と……キスしてくださぁい!!」


「……は?」


 うん、正しい。お姉さんの反応は、正しい。

 でも、それでも!

 信じてもらえないだろうけど、世界のためなんだってば!?


「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!!」


 私だって、ノーマルなのに。ノーマルなのにぃっ!!

 ……泣きながら、お姉さんの唇を、奪った。


「き、来た。キマシタワー!?」


 ぬいぐるみが叫ぶ!

 瞬間! 魔力の奔流が朝焼けのように美しい光となって、街を、夜闇を、地球を照らす!!


「グオッ!?」


 その神聖な光を浴びるだけで、悪魔は苦悶!


「魔力が、みなぎって来たぁーっ!!」


 見なさい、悪魔め!

 これが私の力。臨界を超えた魔力は、百振りもの黄金の魔剣となって、夜空を旋回!


「説明しよう!」


 誰にだよ、とかツッコんだら負け。

 ぬいぐるみが吠える!


「女子中学生宮野りりなは、女の子とキスすることで神聖な愛の力をチャージ! 変身し、悪魔と戦う力を発揮できるんだ!!」


 地球上にあり得ないピンクの髪、魔法少女と魔女っ娘の合の子(愛の子だよ、そのほうが萌えるよ! と、ぬいぐるみに言われた)のような、ひらひら、ふりふりの衣装。もちろんスカートは極短のミニ。

 そう、私は、私は……!


「百合魔法少女、マジカル☆リリィよ!!!」


 ……自分で言っちゃったし。

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