百合魔法少女マジカル☆リリィ
百合宮 伯爵
百合魔法少女、はっじまるよー☆
「さあ、女の子とキスして、百合魔法少女になってよ!」
「……ごめん。わけがわからない」
※ ※ ※
「き、聞いてないわよ!? こんな強い悪魔と戦うなんて!?」
飛来する氷の矢をかわしながら、夜のビル街を高速飛行しつつ、ぬいぐるみに文句を言う。
「やっと飛翔魔法にも慣れてきたばかりなのに。あんなの勝てるかぁっ!?」
私の使命。それは、世界を「ある計画」の元に創り変えようとする悪魔達と戦うこと。
「がんばれ! 君が負けたら、世界は、世界は……!!」
昔話の騎士の、甲冑のような姿の悪魔から逃げながら。ぬいぐるみに叱咤される私。
「君が負けたら、世界はBLで満たされてしまうんだよ!」
「すっごく、どうでもいい!!」
そう、これが私の使命。大悪魔の一人「腐界の女王」の恐るべき野望、人類総BL化計画を阻止すること!!
「ほんとに、すごく、どうでもいいし! いいじゃん、勝手に満たされれば!」
「そんなこと言わないでくれよ! 人類には百合が必要なんだよ!?」
「単に、あんたの趣味でしょうが!?」
私に力を与えたクマのぬいぐるみ。こんな姿だけれど、本当は神様みたいなものらしい。
女の子同士の恋愛……百合を崇め、私に強制してくる変態だけどね。
「わ、わわわっ!?」
悪魔の氷ミサイルを間一髪避けるけど、勢い余ってビルに激突!
普通の人間なら、これだけで即死だけど。あいにく今の私は、魔力で護られている。
「くっ、でも、このままじゃ! 逃げてばかりじゃ勝てない!」
魔力を! もっと魔力をチャージしなくっちゃ!
けど、その方法は、たった一つ……!
「見て、りりな! 女の子だ! 女の子がいるよ!?」
事情を知らなかったら、このセリフだけで通報されそう。
とにかく、私が飛び込んだのは夜のオフィス!
視線の先には、腰を抜かす、綺麗なお姉さん!
「なりふりかまってられないわ!」
夜闇を裂いて、悪魔が迫る!
「お、お姉さん! お願いがあります!」
「は、はい、なんでしょう!?」
見ず知らずの人に、こんなお願い……。
でも私は、勇気を振り絞って!!
「私と……キスしてくださぁい!!」
「……は?」
うん、正しい。お姉さんの反応は、正しい。
でも、それでも!
信じてもらえないだろうけど、世界のためなんだってば!?
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!!」
私だって、ノーマルなのに。ノーマルなのにぃっ!!
……泣きながら、お姉さんの唇を、奪った。
「き、来た。キマシタワー!?」
ぬいぐるみが叫ぶ!
瞬間! 魔力の奔流が朝焼けのように美しい光となって、街を、夜闇を、地球を照らす!!
「グオッ!?」
その神聖な光を浴びるだけで、悪魔は苦悶!
「魔力が、みなぎって来たぁーっ!!」
見なさい、悪魔め!
これが私の力。臨界を超えた魔力は、百振りもの黄金の魔剣となって、夜空を旋回!
「説明しよう!」
誰にだよ、とかツッコんだら負け。
ぬいぐるみが吠える!
「女子中学生宮野りりなは、女の子とキスすることで神聖な愛の力をチャージ! 変身し、悪魔と戦う力を発揮できるんだ!!」
地球上にあり得ないピンクの髪、魔法少女と魔女っ娘の合の子(愛の子だよ、そのほうが萌えるよ! と、ぬいぐるみに言われた)のような、ひらひら、ふりふりの衣装。もちろんスカートは極短のミニ。
そう、私は、私は……!
「百合魔法少女、マジカル☆リリィよ!!!」
……自分で言っちゃったし。
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