第12話 START OF DEATH WORLD

 さすがにいつまでも泣き崩れているわけにもいかないしリリアのあの怯え方は俺に何かを伝えたいが禁則事項で伝えきれなかったとみてとるべきだろう。宿り木・月光・神理。それぞれ俺が異世界グルカルトにて手にした最上級の能力である。そのレベルでないと救済なし得ない何かかそれとも単に切り札として使えるという意味なのかは分からない。

「まあ取り敢えずは始まりの街に行ってそこでログアウトかな」

 呟きながらメニューを操作してストレージから転移結晶を取り出す。行き先は始まりの街オラリオン。

「転移」

 転移結晶を持ち呟く。すると光が俺を包みチュートリアルの草原から消える。



 光が消えると何故か中世ヨーロッパ風の広間で背後には噴水と謎の巨大なモノリス。


 確か7世界の統合論が元のはずだ。ならもう少し廃退的な雰囲気があってもおかしくないはずだが俺の認識の及ぶ範囲ではそんな感じではない。というか銃の整備に使う油の匂いすらしない。

「こんなものか?オンゲをあんまししない弊害だな。さて」

 異能その1? 空間認識

 視界を断ち流れて来る気流などから大体の位置を把握してざっと脳内でマップを組み立てる。う〜ん、この感じ冒険者ギルドと生産者ギルドがあるな。と言っても予測でしかないが。視界を回復させるとメニューにあるマップに俺が把握した範囲内のものがアップデートする。…リリアのチュートリアルは本来の形で終わったわけじゃあないし、ミミアも偶に変な感じで抜けてる所があるからな。流石は魂の姉妹、似てる。取り敢えずは両ギルドに登録してログアウト。


 うん?なんか違和感。まあ気のせいだろう。気にせず先に冒険者ギルドに向かう。

 冒険者ギルドの看板はグルカルトと同じく剣と杖が交差してありその後ろに魔獣と思わしき熊の首上がある。普通に考えると怖いなその光景。で反対側には生産者ギルド。こちらは工具箱をイメージさせる看板だ。ひょっとして剣士ギルドや調薬師ギルドなんかもあるのか?

 そんな疑問を抱きながらも冒険者ギルドの中に入る。中はとても綺麗だ。ひょっとして運営が最初の街だから何らかの特殊な役目を与えるためにこんな風景にしたのかもしれない。

 ここに来るまで俺は時間が遅かったらしくギルドは空いていたので直ぐに受付に行く。

「初めまして、冒険者登録ですか?」

 淡い空色の髪をした美人な女性にそう言われた。

「ええ。それと生産者ギルドとどちらも入れますか?」

「出来ますよ。じゃあこの水晶に触れて下さい」

 手元で何やら魔道具みたいなパソコンを操作しながらこ○○ばで出てくるあの機械を差し出す。妙にハイテクだなこの世界。一体人類は何をしでかしたのやら。そう思いつつも右手を水晶に翳す。

 すると途端に何か視られたというかいろんなものが抜かれた気がする。

「—充分ですよ。リョーさんですね。へぇ〜なかなか面白いですね」

 なかなか面白いってそれどう言う意味だ。

 ギロリと半眼を向けるも彼女は作業に夢中で気付いていない。この人、大物だな。


「こちらがギルドカードになります。ギルドカードはどのギルドでも共通して使えます。また無くされた場合は再発行となりランクはリセットされます」


 以下ギルドについての説明が長々と続いたがイマイチ何が重要なのか分からないので省略。現在のランクはFであると言うことが分かった。



 以下生産者ギルドでも同じ説明があってそこである程度の調合の素材を買って武器や防具を調達しようとした時。



 その全てが始まった。



 後に虚空戦争と呼ばれる史上最悪の犯罪。

 そして終わりを綴ったはずの彼らの物語が再び動き出す。



 何故か再び転移結晶の光に包まれる。再び今さっきの広間だが全体的に様子がおかしい。が一番おかしいのは巨大なモノリスの上に佇んでいる黒いローブを着た人。


 

 アラートが今日一番に鳴り響く。この音は災害指定級。もしくは戦略級のナニカに狙われた時と同じ。もしかしてこのゲームは何らかの危機…いや誤魔化すのは止めだ。

「デスゲームなのか?」

 俺のポツリとした発言にローブの奴は反応した。

『いかにも。まさか我が説明する前にそこにたどり着く輩がいるとは思わなかったが』

 肯定。リリアが危惧していたのはそう言うことか。なら殺しの方法は電磁パルスによる脳の直接破壊。こめかみ当たりに丁度電極があったから幾ら強靭な肉体でも脳を焼かれてしまえば少ない例外を除けば即死だ。RIVAIBU LIFE という未完の技術以外だとほぼないはず。

『諸君らも既に気付いているだろう。メニューにログアウト機能がないことに』

 確認してみると確かにない。何人かはメニューの深部まで探っているようだが徐々に減りやがて全員がソイツを見る。ただその視線はとてつもなく幼稚だが殺気が篭っている。

『これはこのゲームにおける本来の仕様だ。バグなどではない』

 すると今度は何故か俺に視線が集まる。何故に。

「電磁パルスで脳を破壊。多分強制切断も破壊。バッテリーが積んであったのは病院への輸送中への配慮というわけか」

『いかにも。そこまで見破られるとは思いもしていないがな』

 周りの開放しろやふざけんなとかどうでも良い罵詈雑言が飛んでいる。幾つか俺に向けてもいるな。演技と思われているのだろう。あの無敵盾のせいだな。

『ゲームクリアは幾つかある。それはメニューのストーリー欄に載せておこう』

 ふざけてやがるな。ギャルゲーというわけでもないぞ分類的はMMORPGだぞ。ということはバッドエンドもあるわけですね。プレイヤーの全滅という名の。

『では、諸君らの健闘を祈る』

 そう言ってローブの人は消えていった。


 その直後、数十名のプレイヤーはフィールドに駆け出す。


 さて、いろんなものを確認しますか。

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