第7話魔術

 逆さ十字のネックレス。

 それはかつて俺が異世界にてとある少女に送った護符タスマリンの一つである。その少女に義妹の面影を見落としたのか救えなかったミミアの姿を重ねたのか。ただリリアが身につけていたのはそれと寸分違わないものだった。無論、付加能力エンチャントもだ。ルーン言語・魔術言語を組み合わせて魔導回路など俺含むテンスの神子しか知らないずのものだ。

「君は…一体」

 何者なんだ?その思いが強くなる。

「リョーさん?どうかしましたか?」

 不思議そうにこちらを見上げるように尋ねるリリア。

「いや、大丈夫。乗り越えたトラウマだから」

「そうですか、ならいいのですが」

 気を紛らすために剣をブンブン振る。このけんは思ったよりも自分の中で重く感じる。基本的に楽観視できない性格になってしまっているので仕方ないが。まあ偶々だと思い込むほかあるまい。記憶を読み取ることは出来ないわけだし。

「じゃあ次を」

「畏まりました」

 何処からともなく杖を取り出して掲げる。どことなく杖じゃなくて剣のように見える。そう言えばあの娘に与えた杖にはレイピアを仕込んでいたような。


 ところでそれを触媒にするってことは


 そんな思いの中召喚陣が完成する。現れたのは全身銀色に包まれた3m大のゴーレム。何故か丁重にemethと額に書いてある。うん、誰なんだろうこれ作った人。

 剣の面で殴り掛かる。こいつらに刺突と斬撃は対して効かないしな。だがLPバーは全然減らない。銀かと思ったけどミスルリですか。魔力伝導率がアホほど高いあのミスルリですか。アレ、弱点の魔法攻撃が通らないというかそもそも持っていない。打撃系、衝撃系のダメージもたいしてない。なら賭けだ。

「《憤怒の獅子よ・鋭く吠えろ》」

 黒魔術炎熱系Bクラス フレイズ・ハウル

 炎熱波を前方のみに広げる戦術級魔術だ。マナが存在するので試しに打ってみたら完成した魔術陣が現れ灼熱の波動が渦を巻き一番左のeを消し飛ばす。すると機能を停止してガタンと膝をつき光の粒子となりて消える。うん問題しかないね。まあたかが3mのゴーレムに戦術級魔術を使う方が可笑しいのだけど。よく見るとMPバーは7割強も減らしている。大半を霊脈のマナから賄ったとは言えどもこうもたやすくMPを消費するとなると厳しいものがある。

「リリア、次を」

「…あっ、はい。分かりました」

 そうして再び杖を掲げる。ここで俺はとある違和感を覚えた。

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