第33話 今年を思い返す昴

今日は12月31日。昴は部屋でゆっくりしていた。普段から掃除はしているので

片付けはやらなくてもいい。買い物も

していて特に大晦日らしい事をする

事はないと思っていたが、隣に住む侑子が

やって来て部屋の掃除を手伝ってほしい

と言われた 。


侑子の部屋を片付け一緒にお昼をとる。


「ありがとね昴」

「ま、暇だったからな。今日はバイトも休みだしな」

「ライブとかは?」

「今の所はない。まぁ来年の予定は多少

あるけどな」

「ほんと、まさかあなたがミュージシャン

になるなんてね」

「まだプロじゃない」

「それでもライブしてるんだから同じ

でしょ。海外でもしたんだし」

「そうだな。俺も驚いてるよ。同じ高校生活なのに去年とはまったく違うんだからな」

「そうね。去年のあなたは話しかけても

まともに返事もしなかったからね」

「当たり前だ。だが、今は悪かったと

思ってるよ」

「ほんと、丸くなったね。あの子に感謝

しないと」

「めぐみはあまり関係ない」

「素直じゃないのは相変わらずだけど

名前を呼べる仲にはなったのね」

「あんた、鋭いな」

「大人をなめたらダメよ!ちゃんと見て

聞いてるんだからね」

「みたいだな」

「それで、今日はどうするの?」

「何もしないさ。だから夜もうちには

来るなよ。飯は作っといてやるから」

「わかったわ」


昴は侑子の部屋を出た。何もしないと

言ったが、昴は部屋に戻らず、少し

外を歩く事にした。


近くの公園のベンチに座り、自販機で

買ったコーヒーを飲む。


「やっぱり、ロンドンやパリとは違うな。

向こうの方が俺にはあってるかも知れないが、俺は自分で行く事は出来ん。俺は

存在してない奴だからな」


昴は自分を捨てた親を恨んだ。顔も名前も

わからないが。少しして昴は公園を

出て部屋に戻った。


夕方になり、とりあえず飯を作り食べる。

その後、イヤホンをつけ、キーボードを

演奏する。これからはこれが仕事に

なるので、毎日欠かさず弾いていた。


夜、昴は歌番組を見る。普段からテレビは

見ないが、めぐみとしたしくなって来た

頃から見るようになり、今日はその番組に

めぐみが出るので見る事にした。


番組も終わり、昴は風呂に入って、ベッドに

横たわる。時間は23時50分、後10分で

今年が終わる。


昴は自然と今年をふりかえった。


春までは変わらず、自分を嫌い、人間を

嫌っていた。侑子ともまともに話し

たりせず、全てにガードしていた。


しかし、そこにめぐみが現れた。最初は

同じ様にガードしていたが、次第に

それは崩れていった。


めぐみの職業でもある音楽と出会い、そこ

から次々と人と出会った。そうしている

うちに自分が甘くなってるのに気づき

不安になったが、それも悪くないとも

思って来た。


さらには海外にまで行き、ライブをしたり

するなど、本当にがらりと自分が変わって

しまった事を実感した。


そう思いかえしていると、日付が変わり

年が明けた。それと同時に昴のスマホに

メールが沢山届いて来た。チーム霧島や

安部、涼介や紗香にミラからと、こうして

見ると、去年のわずかな間に多くの人と

関わりが出来たのだと、昴は感じた。


昴はとりあえず全員に返事を返し、その

まま眠りについた。



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