第8話 ライブをしても何も感じない自分を嫌う昴

客達は静かに待っている。そして、幕があがり、演奏が響く。それは昴のピアノ演奏だ。


昴はサングラスをし、顔を隠している。

衣装はなんと私服だが、昴の服は何かの

コスプレ?と言わんばかりの服で

それだけで格好よかった。


それを見た客達もざわついていた。

その衣装とは違う、静かな昴の演奏、そして

音がなりやむと、再びステージは暗くなり

そこからいつものめぐみのライブに入る。


途中のMCでメンバーを紹介する。昴は

自分でライブが始まる前に楓(かえで)と

言う名に変えて紹介する様にめぐみに

言った。


その紹介でめぐみは昴の演奏はすごいと

称賛し、今演奏して見せてと無茶ブリを

してしまった。


昴は沈黙したままだが、手が動いた。そして

一人、演奏する。派手な容姿からは

創造もつかない程のバラードを昴は簡単に

弾いてみせた。


その演奏は一分ちょうどで終わった。ホールは静まりかえったが、一人が拍手をすると

全員が拍手をした。昴はめぐみの要求も

スタッフの要望もクリアした。


それからはさらにライブが盛り上がり、昴は

ギターまで演奏をし、この日一番の

盛り上がりにさせた。


そうして無事にライブは成功した。その後

めぐみ達は打ち上げに行くかことに

なったが、その場所に昴が働いている

ファミレスになった。めぐみが提案し

昴は断るが皆に押しきられてしまった。


めぐみ達は食事をするが、昴は参加せず

仕事に入ってしまった。


「それにしても、あいつすごかったな」

「そうですよね。あれだけの演奏が

出来るんだから、うちからデビューして

くれないかな」


プロデューサーとマネージャーの阿部が

話している。


「それは無理だと思うわ」

「どうして?めぐちゃん」

「・・・彼は人嫌いだから」

「人嫌い?」

「確かに、態度はでかいな。俺らにも敬語を使わないしな」

「そう言えばそうね。それに、ライブなのに楽しくなさそうだったわ。笑ったりして

なかったし。なんでかな」

「・・・」


めぐみは昴の事を阿部達に話した。それを

聞いて阿部達は驚いていた。


「本当なのそれ?」

「ええ。彼から聞いたし、学園でも皆

知ってるし」

「それなら、ああなっちゃうわよね」

「それじゃあいつは一人で暮らしてるのか」

「大変どころじゃないですよね」

「もしかして、めぐちゃんが最近おとなしいのは彼の事を聞いて?」

「ええ。正直、最初はただ私を知らないなんてありえないわって思ってたんだけど

話しを聞いて、知らないのは当然だわ。私

今まで出来ない事なんてなかったから。ちょっと衝撃だったわ」


それから阿部は昴に聞いた。昴は本当だと

言った。昴は自分の事は気にするなと

言い、仕事に戻った。


打ち上げは終わったが、楽しさと切なさが

半々だった。会社に戻っためぐみ達。阿部が

彼を本気でデビューさせようと提案した。


無理かも知れないが、それで彼が楽しく

なったり出来るのならと考えた様だ。

それにめぐみも賛同し、これからは昴を

デビューさせる為に話しかけて行こう

と思った。


その昴は部屋戻り、ベッドに倒れこんだ。


初めてあんな事をしたが、何も感じず

ただやりすごしただけに昴は少し

自分が嫌になった。

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