第40話(ゼノの正体)

ーーゼノは、おじいさんの家のリビングでミネラルウォーターを貰う。コップを用意してくれたが、ゼノはペットボトルをらっぱ飲みがぶ飲みする。


「ぷはーーー!…………うめえ」

「水も結構高級品なんだよ。味わってくれ」

「すまん。じいさんは独り暮らしか?」

「ああ。家内は数年前に」

「そうか。悪かったな」

「そこに写真が飾ってあるだろう」


ゼノは、棚の上に飾られた写真を見る。驚きだ。


「アッツにじいさん。だがなぜ、スタンが写っている? 実在の人物か?」

「なぜ、家内の名前を…………」

「家内? ほう、そうか。そういう事だったのか、マザコンめ」


淳史はVRゲームの中で親と恋愛関係になっていた。それをゼノはマザコンだと結論付けた。


「淳史の知り合いなら、不思議ではないか」

「ところで、俺は何者だ?」

「記憶喪失かい。それなら、VR装置で個人を特定できるよ」

「頼む」


おじいさんは、サイケなヘルメットを持ってきた。


「これは?」

「頭に被るだけで、VR世界にログインできる。ログインすれば、どこの誰だか登録が判るよ」

「助かる」


ゼノはサイケなヘルメットを被り、電脳世界にログインした。


ーーゼノの正体は………………。人造人間だった。コードネーム〝ゼノ〟異質な者として特殊能力を先天的に植え付けられたデザイナーズベイビーだ。すると、半エアハートになり、未来を見た。そこには、淳史の死。AIに殺されてしまう。ゼノは急いでログアウトし、ヘルメットを外す。


「じいさん。アッツは今どこに居る?」

「研究所だろう。会うかい?」

「今すぐ!」

「あ、ああ」


おじいさんは、ピザを皿に移していた。


「タクシーを呼ぼう。ここから7~8キロメートルと言ったところだ。その前に、腹が空いたろう、ピザでも食べなさい」

「助かる」


ゼノは、ピザを1ピース食べる。味は悪くない。


「美味しいかい?」

「ああ。タクシーはいつ呼んでくれる?」

「もう呼んだよ」

「いつの間に?」

「音声認識してるはずだ」

「さっきの会話でか? 監視社会だな」

「これはこれで、悪くないぞ」


ブワーっと、おじいさんの家の駐車スペースに空飛ぶタクシーが着いた。


「色々ありがとうな、じいさん」

「淳史によろしく伝えてくれ」

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