第37話(真実)

ーーゼノは、警察病院に着き、外来窓口へ行く。受付の事務員がゼノの腹を見るなり「まあ、大変!」と叫んで、外科医を呼んだ。ゼノは、すぐさまオペ室に運ばれる。


ゼノの傷口は幸い大事に至らず、7ミリメートルほど縫われ、縫合された。念のために1日入院となった。小泉は手を回し、ゼノを1人部屋の個室に入れた。


ゼノと小泉は、今後について話し合う。


「とりあえず、無事で良かった。犯人に目星は?」

「分からない。アッツじゃない事は確かだ」

「本当かい? 黛君。近山淳史が今どこにいるか聞いてみるといい」


ゼノは、携帯電話を取り、淳史に電話をかける。


『ツー…………ツー…………お掛けになった電話番号は現在使われておりません』


「何でだ!? ぐぅ、腹がいてえ」

「大声を出さない。傷口が開くよ。そろそろVRゲームをやめようか」

「あれはあれで、結構楽しい」

「そうじゃない」

「どゆ意味?」

「大元のVRゲームだよ。黛君、よく聞いてくれ。黛君はVRゲーム内のVRゲームをやってたんだよ。それがセーブザウォーだ」

「意味が解らない」

「つまり、この今こそがVRゲームなんだよ」

「さっぱり解らん」

「じゃあ、今年は西暦で何年?」

「そりゃ………………。今年は1982年辺りかな」


ゼノには解らなかった。今年が何年か。


「やはり重度のVRゲーム依存症のようだね。強制ログアウトしてもらうよ」

「待ってくれ。小泉さんは内閣情報調査室の人間だろ?」

「未来のね」


ガシャン! ゼノは気を失った。


ーー病室で数人の医師が、ゼノの脳を調べる。リアルの世界は、2215年だ。


「さて、この検体をどう処理する?」

「スラムに捨ててこよう。データは十分取れた」

「じゃあ、俺が行ってきます」

「分かった。頼んだよ、近山君」


近山は、自動運転の車にゼノを乗せ、スラム街へ行く。


「黛ゼノ。面白い検体だったな。俺を親友だと思い込んでいた」


近山は、スラム街のゴミ集積所に着くと、ゼノの肩を担ぎ上げ、ゴミ袋の上に投げ捨てる。


「じゃあな、黛ゼノ」

「ま…………て…………」


近山にゼノのか細い声は届かず、車に乗り込み、行ってしまった。


ゼノは、ゴミ袋上で大の字になる。


「畜生。俺はいったい何者だ」

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