第36話(ログイン中は無防備)

ゼノは、すぐさまフレアを撒く。フレアは対ミサイル用デコイだ。そして、ゼノはミサイルを撃ってきた敵機にドッグファイトを仕掛ける。ループで敵機の後ろに着くと、狙いを定めて機銃を発射した。


ガガガガーー! ドッカーン! 見事撃墜だ。


「さて、そろそろ戻るか」

「ダメだ! 敵要塞を攻撃してくれ」

「こっちにも都合ってもんがある」

「もう少しだったのに。惜しい奴だ」

「また今度な」


ゼノは、淳史の様子を見るために、ログアウトを急ぐ。今、ゼノに科されている任務は淳史の疑いを晴らす事だ。


ゼノは戦闘機をUターンさせて、自軍要塞に戻る。


「いたっ!」


突然、ゼノの腹に激痛が走った。


「撃墜された?」

「こちら司令官補佐。お前は落とされていない。着陸は抜かりなくな」

「あ、ああ」


ゼノは、高度を下げて滑走路と一直線になる。車輪が接地して、ゼノに振動が伝わった。腹痛は治まらない。急いでログアウトする。


ゼノは現実に戻ってきて、ヘッドマウントディスプレイを外す。すると、ゼノの腹に包丁が刺さっていた。深さ3センチメートルほどだったので、ゼノは包丁を引っこ抜く。血液がセーブザウォー筐体を濡らす。


ゼノは隣を見ると、淳史は居なかった。


「まさかアッツが包丁を? いやいや、動機がない」


ゼノは腹を押さえながら、1階に降りる。人の気配がない。とりあえず、エキシージを停めてあるところまで行く。


エキシージは無事だった。しかし、淳史のシルビアがない。


「俺に包丁をブッ刺した犯人は誰だ」


ゼノは、小泉の携帯電話に連絡を入れ、通話する。


「小泉さん、腹を刺された」

「誰に? 近山淳史かい?」

「多分違う。セーブザウォーにログインしてる間に刺された。アッツには、俺を刺す動機がない」

「近くに近山淳史は?」

「車で出掛けたみたいだ」

「運転は出来るかい?」

「ああ、なんとかなりそうだ」

「では、警察病院に行ってくれ。私もすぐに行く」

「分かった」


ゼノは、エキシージに乗り込み、エンジンをかける。振動で傷口が抉られる。


「痛い…………。行くぞ、エキシージ!」


ゼノは、エキシージを駆り、警察病院へ向かった。

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