第34話(色々とアウト)

ゼノは近山家にこっそり入る。そして、淳史の部屋に行く。いつもと変わらない顔が居た。淳史はテレビを観ながら、ゼノに言う。


「テキトーに座れ」

「おお。何の番組観てんの?」


ゼノは自分のセーブザウォー筐体に座る。


「有名女優の薬物謝罪会見だ。さあ、なんと弁明するかな?」

「若手女優の賞味期限切れで薬物に手を出したか」

「ゼノ、結構辛辣だな。俺、ファンなんだけど」

「初耳」

「旦那に浮気された挙げ句の様だ。可哀想だけど、アウトだよな」


東京湾岸警察署から憔悴しきった女優が、マスコミの前に出て来て頭を下げた。5秒ほどだが。フラッシュが一斉に焚かれる。ゼノと淳史は固唾を飲んで、謝罪会見を見守る。


『この度は、私だけ気持ちよくなってごめんなさい。皆も気持ちよくなりたいよね。私だけ気持ちよくなってごめんなさい』


記者達はポカンとしている。ツッコミを入れる間もなく、女優は、弁護士が用意した車両に乗り込み、そのまま走り去った。すぐにバイク隊が追い掛ける。マスコミのヘリコプターも出動だ。


「何だ、今の…………」

「凄い度胸だな、アハハ」

「笑い事じゃないぞ、ゼノ。これは色々とアウトだな」

「本音を言っちまったんだろう。ジワジワ来る笑い。下手なお笑い芸人より面白い」

「チャンネル変えるぞ」

「任せる」


淳史はリモコンでチャンネルを変えると、今度は有名女優の旦那が釈明会見を行っていた。浮気をしたバカだ。


「同時にやるとはな。ファンなのに、シクヨロやりやがって」

「アッツには、スタンがいるだろ」

「それとこれとは別問題だ。囲みが始まるぞ」


フラッシュの点滅に注意してください。とテロップが出るが具体的にどうしろと? サングラスを掛ける? チャンネルを変えよう。


リポーターが問い詰める。


『なぜ不倫などしたのでしょう?』

『そりゃセックスが気持ち良かったからだよ』

『は、はあ』

『かみさんより気持ち良かった。不倫相手は名器のマンピーだ。仕方なかったのさ。俺のテクニックも一線を画す』


司会者は『い、以上で記者会見を終了と致します。ありがとうございました』と慌てて幕引きをする。


「夫婦揃ってバカだな。こんな奴と結婚してたんだ。幻滅したろ」

「悲しいぜ。さっ、セーブザウォーやろ」

「ああ」

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