第19話(追走。GTR対GTS)

スタンが言った通り、R32スカイラインが5連コーナーを上がってきて、駐車スペースに停めた。GTSーtタイプMだ。これもクラシックカー。


「スタン。久しぶりだな~」

「洋介(ようすけ)君じゃん。久しぶり」


2人は知り合いだ。洋介は、スタンをRBムーンにスカウトしたが、断られている過去がある。


「シルビアとGTR。新しい仲間か? 一匹狼のスタンが」

「弟子よ。2人とも、こっち来て」


ゼノと淳史は、洋介の元へ行く。


「こちら、ゼノ君。GTRを手足の様に操るわ。そしてこっちが、淳史君。新人さんね」

「宜しくね」

「ども~」

「よろ」

「じゃあ、GTRのゼノ君。追走しようか」

「いきなりすか」

「GTRとGTS、グレードは違うものの同じR32だ。やろうよ」

「うーん…………前走ってくれるならいいでしょう」

「そうこなくっちゃ」


ーー先頭は洋介。次にゼノ。ギャラリーとしてFD3Sにスタンと淳史が乗り、5連コーナーを下っていく。スピンターンで一列に停まる。対向車無し。思いっきり出来る。


洋介がパッシングしてクラクションを鳴らす。そしてハザードランプを消し、ウインカーを出す。キュルキュルキュル! 洋介のGTSがリアタイヤを滑らしながら、第1コーナーに入っていく。ゼノはコーナー手前でクラッチを蹴り、カウンターを当てる。追走の前と後ろの差は50センチメートル程だ。


「やるじゃん、洋介とやら。俺が年下でも負けねえぞ」


次のコーナーはS字だ。洋介はS字を繋げた。ゼノもS字を繋げて加速する。その光景を目の当たりにした、淳史とスタン。


「2人ともプロ級ね。ゼノ君も負けてない」

「GTRがピッタリ着いていきますね」

「それだけじゃないわ。追走の場合、前を走るのがプレッシャーをより感じるけど、後ろもカマ掘らないテクニックが要求されるの」

「ゼノ、スゲー」

「一筋の線の上を走るような極限状況よ。それをGTRで。やっぱりスゴい」

「四駆だからかな」

「淳史君、気付かない? ゼノ君のGTRはアテーサキャンセルされてる擬似FRよ」

「アテーサ?」

「GTRの四輪駆動システムよ。R32だけは、ヒューズを抜くだけでFRになるの」

「知らなかった」


GTSとGTRは駐車スペースのストレートに差し掛かり、直ドリをしながら、右の駐車スペースに停めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る