第17話(クスリ)

ーーゼノと淳史は、それぞれ別のガソリンスタンドで給油する。ゼノは現金。淳史は親のクレジットカードで。


ゼノが、淳史の自宅に着く時にはもう夕暮れだ。駐車スペースにはシルビアが停まっていた。峠でドリフトをやるにはまだ早い時間帯だ。ゼノは淳史の部屋に行く。淳史はテレビを観ていて、ゲラゲラ笑っている。


「何の番組?」

「バカ&ドジの街ブラ。滑りに行くにはまだ早いだろ? ゼノも観てけよ」

「バカ&ドジって昔、薬物事件で捕まったよね」

「捕まったのは、バカとドジ、どっちだったかな?」

「さあ、忘れた」

「芸能人の麻薬事件で思うんだけどさ。何でクスリをやっちゃダメなんだろ。周りに迷惑かけなきゃ良いじゃん」

「麻薬は脳が壊れて死んじゃうから」

「なら首吊り自殺は良いのか?」

「単なる自殺なら周りにかかる迷惑は限定的だ。クスリは他人を巻き込むから」

「タバコや酒は何で良いの?」

「依存度が低いから」

「ゼノの親はアルコール依存症じゃん」

「酒は簡単に手に入るから。クスリの依存度は食欲の1000倍とも言われてる。腹空かして、目の前にフライドチキンが置いてあるのの、1000倍の欲。それが断続的にやめられない。考えてただけで怖いな」

「なんとなく解ったよ」

「ホントか? テキトーに言っただけだが」

「まあ、深く考えてない。それより、ドリフトだぜ。何時になったら行く?」

「19時45分には支度しようか」

「了解」


ゼノと淳史は、テレビを観る。ゼノは正直、心の底から笑えない。なぜなら、バカ&ドジも組織の者だからだ。


『お兄さん、ドジだね~』

『おめえだってバカじゃねえか』

『はい! 2人合わせてバカ&ドジでーす』


ピッ。淳史はリモコンでテレビを消す。


「さて。行くか」

「ちょっと早いけど南木曽峠まで30分は掛かる。着いてこい。場所分かるよな?」

「もち」


ゼノはGTRに乗り、発進させる。淳史もシルビアを発進させ、GTRの後を追う。目指すは、南木曽峠だ。

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