第16話(定常円旋回)
ーーゼノが運動公園に到着すると、先に淳史が来ていた。ゼノはGTRをシルビアの隣に停める。
「アッツ、まずは手本を見せる。乗れ」
「分かった」
淳史はGTRの助手席に乗る。
「シルビアをコーンに見立てて回るぞ。よく見ておけ」
「ああ」
平日の運動公園の駐車場は、端にトラックが数台と乗用車が数台停まっている。GTRとシルビアの周りには十分なスペースがある。
ゼノは、徐行してからギアを2速に入れて、アクセルを吹かし、クラッチを一気に繋ぐ。右にステアリングを切り、リアが流れ出したところでカウンターを当てる。リアタイヤから白い煙がモクモクと上がる。GTRは重量級で更にフロントヘビーだ。ステアリングとアクセルのコントロールを細かくして扱う。リアタイヤが流れすぎたらアクセルを戻し、アンダーステアが出たらカウンターを少し戻して体勢を保つ。
「スゲーよ、ゼノ! これが…………ドリフト!」
「シルビアならもっと簡単なはずだ」
ゼノは、GTRで数周回ってシルビアの隣に停めた。次は、淳史の番。淳史はシルビアの運転席に、ゼノはシルビアの助手席に乗り込む。そして、シートベルトをする。
「大丈夫…………大丈夫…………」
「デフは入ってるよな?」
「分からん! 行くぞ!」
淳史は、ギアを2速に入れて、アクセルを吹かして一気にクラッチを繋ぐ。ガクガクガクガク。
「もっとアクセル!」
「おお!」
シルビアのリアが流れ出す。しかし、バーンアウト状態で、GTRをコーンに見立てるつもりが、右回りになってしまった。淳史は、カウンターを当てるが、タイミングが遅れてシルビアはスピンする。
「デフは入ってるぞ。腰で挙動を掴むんだ。もういっちょ!」
「おお!」
淳史はコツを掴んだ。次はそれとなくシルビアを回すが、2周で終わる。運動公園の植え込みに突っ込みそうになった。
「どうだ? 楽しいだろう」
「堪らんちサマランチ」
「さあ、帰るぞ。運動公園の管理人が通報してるかも」
「ヒートショック! 俺の家で待ってる。降りて」
「じゃ、あとでな」
ゼノは、シルビアを降りてGTRに乗る。淳史は逃げるように運動公園の駐車場から脱出した。ゼノも後を追う。
「コラー! 暴走族! 2度と来るなー!」
運動公園の管理人は、顔を真っ赤にして怒り狂っている。ドリフトに対し無理解な奴は所詮、小者だ。
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