第3話(エアハート)

ゼノは黒塗りのセダンを降り、淳史の家の駐車スペースに行く。無事にR32スカイラインGTRが停まっていた。近くの川には規制線が貼られている。


「凜…………」


「ゼノ!」


淳史が家から出てきた。ゼノはどうしたらいいか解らない。


「アッツ…………俺」

「凜を殺したか?」

「殺してなんかいないよ! アッツまで疑うのか!? じゃあな!」


ゼノは怒りに満ちた。急いでGTRに乗り、自宅へ帰る。淳史は何か叫んでたが、ゼノには届かなかった。


ゼノは自宅に着くと、父親が鬼の形相で待ち構えてた。


「ゼノ! 人を殺したのか!? 自首しなさい!」

「うるせえよ、酒乱。事情も知らないで決めつけるな。雑魚カスバカアホナード」


ゼノの父親はアルコール依存症で手がブルンブルンと震えてる。おまけに2型糖尿病のクズだ。


「訳の解らないことを言うな! 警察を呼ぶからな!」

「勝手にしろ」


ゼノは、冷蔵庫から缶ジュースを取り出して、GTRに戻る。そして、黒いスーツを着た男から渡された薬を飲み、〝エアハート〟をする。


ゼノは、すぐに黒いスーツを着た男にメールを送る。


『エアハートをしましたが、特に問題なしです。それと、お願いなんですが、凜を殺害したホンボシを捕まえて拷問してください』

『一安心だ、ありがとう。そっちの事は組織の別動隊に任せよう。黛君、知らないようだけど、凜さんが殺された日に、近くのりんご狩り園で銃殺事件が起きて3人亡くなってる。私は、他の組織が動き出してると推測してる。黛君も気を付けてくれ』


ーー次の日曜日。凜の葬式があった。ゼノは行くか行かないか迷っていた。そんな時に淳史からメールが入る。


『葬式に来ないのか? 線香を立ててやってくれ』


ゼノは、この一言で少し楽になった。淳史はゼノを犯人扱いしてない。しかし、凜の身内には、ゼノに対し心ない考えを持つ者も居るだろう。ゼノは返信する。


『行くよ』

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