第2話(組織)

ゼノは警察署の取調室で聴取を受ける。


「何で幼い子を手に掛けたのかな。小児愛者か、てめえは」


警察は、はなっからゼノの犯行だと決め付けてる。


「根拠は? 初動捜査を見誤ったな。それに、水死体だろ。事故や自殺の線は消えたのか?」

「でもねえ、君。凜さんの首に圧迫痕があったんだよ。君のお父さんとお母さんに迷惑をかけちゃいけない。早く本当のことを言いなさい」

「今度は泣き落としのつもりか、バカ。俺が犯人だという根拠を示せと言っている。それが出来ないなら帰るからな。任意だろ」

「帰さないよ。そんな事より早く自白しなさい。それが君のためでもあるのだから」


ゼノはあきれて、席を立つ。すると、警察官は吠える。


「公務執行妨害です! 応援を要請します!」

「何もしてねえだろ」


ゼノは、公務執行妨害で逮捕されてしまった。今度は手錠と腰縄で椅子に縛り付けられる。


「早く自白しないと、もっと酷い目に遭うよ」

「卑怯だぞ、お前ら! 根拠を示せ! 自白を強要しやがって!」

「根拠根拠うるせえんだよ! ロリコンが! お前以外に殺害のチャンスはないんだよ!」

「黙秘する! お前らと話しててもラチがあかねえ!」

「おお、黙秘権を使えよ。ロリコン野郎が!」


追い詰められるゼノはどこか余裕があった。そして次の日に釈放される。一夜の留置所生活は酷だったが。


ゼノは、黒いスーツを着た男と喫茶店で話す。


「遅くなって悪かったね、黛君」

「ピンチの時は、ちゃんと圧力を掛けてくれないと」

「これでも急いだんだよ。近山凜さんだったかな? 本当に殺ってないよね?」

「100万回、警察に聞かれた」

「つまり、殺ってないと」

「凜は、俺とアッツのマスコットだった。殺す訳ない。俺が一番悔しいよ」

「〝見えなかった?〟」

「最近、調子悪かったから」

「大丈夫かい。君にはまだやってもらわないと」

「分かってる。契約だから」

「では、今日にでも次のエアハートを」

「大事件?」

「来週、外国の要人が日本に来る。予行演習だよ。これは今日の分」


スーツの男は、薬と100万円の札束をテーブルに置き、ゼノの方へ差し出す。ゼノは、それをポケットに入れる。


「これ飲むと気持ちよくなるんだよな~」

「できれば使わせたくないけど。まあ、風邪薬だって体内でモルヒネを作り出す作用があるからね」

「じゃあ、見えたら連絡するよ。帰るね」

「送っていこうか」

「そうだな、近山宅まで頼む。GTRが無いと、どのみち出来ないから」

「変わってるな、君は」

「エアハート自体、変わってるだろ?」

「まあ、確かに」


ゼノとスーツの男は、喫茶店を後にして、黒塗りのセダンで近山宅へ向かう。

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