第6話 エピローグ
退魔師協会の聖堂の中。
協会の一番偉い総帥が式辞を私達に述べる。
「本日新たな退魔師となった十三名にはこのロザリオを授ける。これからも精進するように……」と言い十字架の中央に玻璃(クリスタル)がはめこまれたロザリオを渡した。
当然試験を受けたからといって全員が退魔師になれるわけではない。
試験に合格出来なかったり試験中に死んだりする人間もいる。
試験前には五十数名いた受験者は半数以上に減っていた。
その多くが試験中に死んだという内容を私は後で知った。
私は運がよかったのだということに感謝した。
良き友に出会え良き師に出会えたのだから。
「お~、授与式は無事に終わったようじゃな?」
ランディ元帥が噴水の向こうから陽気にやって来る。
「どうじゃった? 緊張したじゃろー?」
ランディ元帥に言葉に私は「確かにいざとなると緊張しますね」と言うとカノンは、
「これくらいで緊張してどうする? これからはボク達は生き死に隣合わせなんだぞ」
と言った。
するとランディ元帥が、
「カノン君。足が生まれたての小鹿のようになっておるぞ……」
私はカノンの足元を見た
確かに生まれたての小鹿のように震えている。
「……ま……まぁ少し緊張しますね」
私とランディ元帥はくすくす笑いカノンが「笑うなぁー!」と怒ったので私達は逃げた。
逃げながらランディ元帥は私を見て、
「いい面(つら)構えになったの!」と言ったので私は満面の笑顔で「えぇ!」と答えた。
私はここに来た時はおどおどしていたが今は違う。
自分の意思をはっきりと持って自分の意志でここにいる。
今はまだ多くの人を救うことは出来ない。
それでも一人を救えたらそれでいい。
たった一人。されど一人。
その一人が重要で積み重なって大勢になる。
私はもう迷わない。
このロザリオと共に。
この世界を駆ける。
不完全だが美しいこの世界を。
終わり
咎人の十字架 沢渡六十 @mututo
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