第29話 挨拶
急展開でマドの両親に会いに行くというイベントが発生し、僕はマドの実家に今から向かうことになった。今まで女性とも付き合ったことがない僕は緊張しまくっていたのだが、結果を言うと反対もなくあっさりと認められたのだった。
マドの実家は農家ですぐにマドが連絡をするとふたり家で待ってるとの返事。向かって会ってみれば反対されるどころか僕は歓迎されてしまった。というのも両親が心配していたのは女子校に通っていたせいかあまりの男っ気のなさに心配していたとのことだった。そんな両親だったけれど、僕とマドが結婚を前提とした付き合いをしていると報告すると父さんは泣き出し、母さんは「こんな若いツバメさんを捕まえてたなんて。わかんないものね」とちょっと呆れ気味に言うのだった。
和気あいあいという感じで拍子抜けしてしまった僕だったが、そう長い時間話はできなかった。帰りもあるため実家に長居せず帰ることにした。マドの両親は泊まっていけばいいなんて言ってくれるけど「学校もありますし、家にも帰らないと。なのでまた遊びに来ます」と伝えなんとか納得してもらい帰ることができたのだった。
僕たちは電車に乗って家へと向かった。そんな電車の中。
「なんだかいろいろとごめんね。まさか父さん泣き出すとは思わなかったわ」
とちょっと気まずそうにマドは言った。僕としては反対もなくすんなり言ったわけで
「ううん。僕としてはあっさり認められたからちょっと拍子抜けしちゃった。でも認められてよかったなあって」
と僕は素直に思ったことを伝えた。
「確かに私お見合いを勧めてきてたから反対されるかと少し思ってた。でも、それがまさか男っ気がないからって心配されていただけとは思わなかったわよ。大切な人ができたならそれでいいって……でも問題もなく終わったから良かったのかな? 」
とマドはちょっと困った顔をしながらそう言った。
「それで、優の方の両親の方はどうする? 」
とマドは僕の両親のことが気になったのだろう尋ねてきた。
「僕の方は父さんが休日しか居ないからね。だから休日にあってもらえるように伝えておくよ。今回は僕からきちんと両親にまずは話しておくから。まあ僕の両親も多分大丈夫じゃないかなあ。ふたりとも結構お気楽で放任主義だから」
僕は心配しないようそう伝えるが
「でも、私教師でしょ? おまけに歳も離れているし……」
ああ、ここでも教師って言うことが引っかかってるのか、それに歳か。でも僕は最初から歳なんて気にならなかったからなあ。最初からタメ口で話していたなあなんて思い出してしまいちょっと笑ってしまいそうになるが
「そんなこと全く関係ないから。そんな肩書や歳で人を好きになるわけじゃないんだから。そのあたりも事前にきちんと話して納得させておくよ」
僕はマドに安心するようそう言った。
「はぁまだ先なのに緊張するね。でも優はもう私の親に会って……負けてられないわ」
そう言ってまだ早いのに気合を入れるマド。ほんとこういうところが可愛いんだよなと思わず思ってしまった。
「さて……これで学校にはバレてもいいよね。いや逆に先に話しておいたほうが良いのかな? 」
僕はそのあたりを疑問に思い聞いてみた。
「でも学校よりも先に優の両親に話さないと駄目でしょ? 」
とマドはそう言ってきた。
「いやいいよ。両親には必ず分かってもらうから。気にしないで学校に早く伝えてよ。また問題が起こったら僕が嫌だからね」
そう、もう増田さんなんかに近づいてほしくないんだから。
「そう言えば増田くんを見ても大丈夫? 」
そう言えばさっきなにかしてしまいそうなんて言っていたからちょっと心配になってしまった。すると
「ああ、もう大丈夫よ。だって優が居るしもう相手する必要なんて無いんだから。問題ないわよ」
とすっきりした顔で僕に答えてくれた。それなら問題ないよね?
増田さんの話が終わるとしばらくマドは考え込み始めた。そしてマドは
「うん。わかったわ。たしかにバレて話すと今まで隠していたように見えるし、分かった時点で説明しても言い訳しているようにしかきっと聞こえないだろうからね」
先に説明すると僕に告げてくれた。その言葉を聞いて安心した僕だったけれど伝えていないことがあったなと思い出す。
だからマドを見つめて僕は告げた。
「そうそう……ひとつ言い忘れていたよ」
「優、なに? 」
マドは不思議そうに僕に尋ねてきた。そんなマドに僕は伝える。
「マド……今日は来てくれてありがとう」
そうマドが会いに来てくれなければこの時間はなかったのだから。だから伝える。感謝の言葉を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます