第28話 邪魔をされないために



 僕がスマホの入力をしていると


「あのね。ひとつ考えがあるんだけど」


 マドが急に話を切り出してきた。考えって教師をどうするかってことかな? 


「うん? 今後どうするかってこと? 」


「うん。私、親から最近はずっとお見合いを勧められててね。優と会ったときもそうだった。ちょっと嫌気が差して散歩に出たら優に会ったんだよね」


「そういえばお見合いがどうのって言ってたね」


 その時を思い返すとそんな会話が会ったなあと思い出す。


「だからさ。もし、優が良いんだったら両親に会ってくれると嬉しいなって。そうしたらお見合いもなくなるし正式に親に紹介して交際しているってことなら不純異性交遊じゃないって言えると思わない? ついでに言うなら結婚を前提に……って付けばもっといいんじゃないかな? 」


 マドは思い切ったことを言ってきたなあと困惑した。だけどどうなんだろ? 正式にってお互いの親に紹介して……婚約までいるのかな? いやあるほうがいいよな?


「ほら。結婚は優の学生生活が過ぎてからって言えば問題なくない? ってそういえば優って何歳? 」


 僕の歳も知らずに先走った考えをしてくるマド。まあ18歳ではあるのだけれど。




 マドはこの話は切り出しにくかったんじゃないかなあ。やっとふたり心を通わせることができたけど知り合ってまだ日も浅いし。

 

 でもマドもそこまでして一緒に居たいって思ってくれているんだよなあって。


 今日、マドは教師を辞めるつもりで僕に会いに来たんじゃないかなって思ってる。でも今の話は僕が教師を辞めてほしくないって伝えたからマドがいろいろと悩み考えてくれた結果じゃないかなって。


 だってマドって教師らしく真面目なんだもんな。ごまかすことがホント苦手。いつもメッセージのやり取りだけでもわかるくらいに。そして、増田さんをごまかすことができなかったときのように。だから一生懸命考えたことがこれだったんじゃないかなあって。


 だから多分マド自身も今パニックになりながら僕に伝えているんじゃないかなあなんて思ってしまった。




 僕はそんなマドに


「あのさ、マド。きちんとする? 指輪とか僕はまだ渡せるそんな身分じゃないけれどそこまで考えてくれるマドと居られるならさ。今は言葉だけの形になるけど」


 僕が話しだした言葉をマドは黙って聞いていた。何を言われるのかと期待しながら。


「僕、山下 優はえっと……そうだ。白石 マドカさんのことが好きです。でも僕はまだ学生なのでいつとは約束できませんが、僕と結婚を前提に付き合ってください。これからも一緒に居たいから」


 僕がそう伝えるとマドはとても嬉しそうな笑顔を作り出す。


「今日マドの両親に会えるなら会っていこう。そして僕の両親にも今日会えるかはわからないけれどきちんと会ってもらうことにするよ。きちんとしよう。ふたりのことは。もう邪魔されないようにね」


 と僕が言うと


「なんて馬鹿なことを言ってるんだろうって呆れられるかと思ったわ。優……ありがとう。ううん、好き。これからも宜しくおねがいします」


 そう言って抱きついてきたマド。




「もう邪魔されたくない。離さないからね」


「うん。私も離れないよ」


 ふたりはそう波の音のする初めての海岸で誓いをたてたのだった。


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