第27話 優の気持ち



「僕ってさ。マドに情けないところしか見せたこと無い気がするんだけど」


 好きと言ってもらえた嬉しさに戸惑ってしまったのだろう僕はマドの涙を見ながらもそんなことを口走る。


「ふふふっまた言ってる。前も言ったね、その言葉。物事を真剣に考えられる優は格好いいって言ったよね? それにね、私って男の人苦手って言ってたでしょ? なんていうのかな? あまり良い目で見られないと言うか。男子生徒と関わってると余計にわかるんだよね。でもそういうのって優は全く無くて落ち着くんだよ。まあ逆に私に魅力ないのかなあって心配になったこともあったけどね」


 それをマドは否定してくる。


「そう思ってくれてたんだ。でもね、最初は僕、遠藤さんが好きだったからそっちに興味があったからっていうのもあるかもしれないよ? 」


 と僕が言うと


「もう他の女のことはもう良いの。もう終わったでしょ? 」


 とマドは少しほっぺを膨らませて拒否を示す。


「あっごめん。そうだね。もうマドのことだけ考えないとね」


 と僕はマドを見ながら笑って言った。




「僕もね。マドのこと好きだよ。側にいたかった。それに気付いたのは増田さんがマドを口説いているのを見た後……増田さんに嫌悪を持ってたからそっちのせいかと考えていたんだけど智也に話を聞いてもらった時にはっきりと分かったんだよね。理由? ごめん、わからないなあ。気付かないうちに好きになってたから。何をって聞かれても全部としか答えられないや。でもさ、マドに気になる人がいるって聞いていたからさ。マドが幸せになるならって気持ちを伝えようとはその時には考えてなかったなあ。後、教師と高校生って問題もあったしね」


 そして僕は一息入れて再度話し出す。


「離れないといけないってSNSを削除したときも辛かったなあ。でもマドのためだって。そして出来ることしようって遠藤さんに会って今後マドが困ることの無いよう僕との関係を否定したんだけど。まあ、それだけでマドが迷惑を被らないということはないんだろうけど。マド次第の部分も一杯あったし」


 嫌なことを思い出したなあと思いながらもさらに言葉を続ける。


「ほんと智也のおかげだよね、こうやって会えたのって。気持ちが通じあえたのって。いい友達を持った僕は幸せだな。そして、好きな人に好きだって言われるなんて。ホント幸せなやつだよ。だから、うん。何度も言うけど僕もマドが好きだから。大好きだから」


 そう僕が伝えるとマドは更に僕を力いっぱい抱きしめてきた。そんなマドをいつの間にか僕からも優しく抱きしめ返していた。




 しばらくして名残惜しいながらもふたりは離れた後、並んで座り込み今後のことを話し始めた。


「マドさ、教師はどうするの? ごまかして続ける方法とかないの? 」


「うーん、電車での出来事見られているからどうかなあ。まあ、いろいろとごまかす方法はあるとは思うけどね。それよりも優と引き離されたせいで増田くんと会いたくないって気持ちがすごくあるんだけど……」


 とマドは増田さんに相当怒っているようだった。まあ僕自身も嫌悪持ってるしね。


「それにね、教師を続けたら優と会えなくなるんでしょ? 絶対優って迷惑かけたくないって離れるはずだから」


 マドにそう言われるとたしかにその可能性はあるかなあ。


「うーん、でも僕のせいで辞めさせたくないって気持ちもあるんだけど、はあ。ほんと僕のこの数ヶ月、増田さんのおかげでいろいろと大変になってるよ」


 と僕が泣き言を言うと


「うーん、難しいよねえ。あっそうだ。先にちゃんと私のSNSを再度登録してて。それと電話に住所に優の全部教えて」


 と縁が切れたことに不安があるのだろう、家の住所まで確認をしてくるマド。


「うん、わかったよ。なら先にそっちを片付けようか。スマホ貸して」


 僕はそう言ってまずは僕のスマホにマドを登録した後、マドのスマホに聞かれたこと全てをアドレスに入力していったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る