第26話 マドの気持ち



 電車に乗って着いたはふたり出会えたあの海で。


 まずはマドに断りを入れ母親に一度電話を入れる。僕はまた乗り過ごして終点まで来てしまい学校をサボってしまったと伝えた。さすがに2回目ともなると母親は少し怒り気味に「心配するんだからほんとに気をつけて」と僕に告げてきた。怒ってはいるけれどそれ以上に心配していることがありありと分かる母親の言葉に「ほんとにごめん。もう無いから」と心の中でそう思いながら母親の話をしっかりと聞き入れようと真剣に話をした。


 そんな電話を終えた僕は


「おまたせ」


 とマドに話が済んだことを知らせた。


「お母さん怒ってた? 」


「流石に2回目だからね。怒ってたけどそれよりも心配してくれていたって感じだったよ」


「そう……私のせいでごめんね」


 とマドは僕に謝ってきた。そんなマドに


「ううん。これはこれでいいんだよ。大事な時なんだからさ。気にしないで」


 と僕はそうマドに伝えた。


 そして僕たちはふたりで海沿いを歩く。そして僕とマドが初めてあった場所へとたどり着いた。すると


「やっぱりここかな。座ろっか」


 とマドが言ってきたので僕は頷きマドの横に揃って座った。




 最初はふたりしばらく無言で時間が過ぎていく。そして最初に言葉を発したのは僕。


「今日学校はどうしたの? 」


 そう僕はサボったのだけどマドはどうしたのかが気がかりだった。


「始業式だし担任でもないから休んじゃった」


 とちょっと照れ笑いでそうマドは答えた。まあ休みをとったなら良いかと


「休みならまあいいのかな? よくわかんないけど」


 と僕が言うと


「うん、良いのよ」


 とマドはそう言葉を返した後、思っていた気持ちを語りだした。


「優に強引に通話を切られてSNSも削除されて私途方に暮れてたんだ。なんで離れないといけないの?って。でもこんな結果になったのは私が増田くんとデートしたからだって。優が増田くんのことを嫌悪していることが分かっていたのに。そんな人と関わっていたら嫌われてもおかしくないよね? それでも優に迷惑をかけちゃいけないって思ってしまって。なんで断らなかったの? って。はぁ、悪いことをしたらバレるってほんとなんだなあって落ちこんで。そしてバレて優は離れていって……辛かったわ」


 とマドがそう話してきた。


「まあ嫌ったは違うけどね。マドに迷惑をかけたくなかったってだけだよ」


 と僕が補足を入れると


「うん。智也くんから聞いたよ。私のために一目惚れの彼女……遠藤さんだっけ? 会って話をしてくれたって。嬉しかったなあ。そして私なんて馬鹿なんだろって。その話を聞いて分かったことがあって。確かに優のことも考えていたけれど、教師なのにバレたらって自分を優先している気持ちもあったんじゃないかって。怖いって思っていた私もいたんじゃないかってね」


 そうマドは話を続けた。そんなマドの話を今度は邪魔をせず僕は黙って聞いていた。


「そして会えなくなって……夏休みだから増田くんとは会うことはなかったけれど、優のことばかり考えてしまってたわ。おかげで私増田くんにあったらなにかしてしまいそうなそんな感じだったかもしれない。ある意味病んでいたかもしれないわ」


 マドは一呼吸置いてそしてまた語りだす。


「そんな中智也くんから連絡が来て「朝のある時間、車両にいつも優は居るから会いに来て」って言われたのよ。そういえば私もそう聞いてたなって。もう会えないと思っていたから私は喜んだわ。優と会いたかった。話したかった。でも会って良いのか悩んだの。会いに行けば迷惑を掛けるかもしれないって思ったから。だって教師でしょ? 高校の教師なんだから」


 そしてマドはひとつため息をついた後


「智也くんが会話の最後にね。言ったの。「9月1日の始業式の日ですけど朝の通学時、優の側に俺は居ます。なにか出来るなら俺も手伝いますから。だから来れるなら来てください。後ですね……あなたが大事なのはなにですか? 教師ですか? 優ですか? 考えてみてくださいね」って。その言葉を聞いてね。はっきり分かったのよ。優だって。大事なのは優だって。それなら大事なもののために教師なんて捨てちゃっても良いんだよねって思ったのよ」


 と教師を捨てるという宣言までしてしまうマド。


「い、いや……マド。それでいいの? 」


 と僕は困惑しながらもマドにそう尋ねた。


「うん。はっきり言うわ。私の気になっている人、好きな人は優。あなたなの。だから離れないで」


 マドはそう言うと僕にしがみつき涙を流していたのだった。


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