第24話 幸せ?



 遠藤さんに会って、前向きな彼女を見て僕は何していたんだろうなあってその日1日ずっと考えていた。マドから離れられるように頑張るって言ってたのに何しているんだって。そりゃ急に離れることになったんだから落ち込むのは仕方ないことだけどいつまでも引きずってちゃ言ってることとやってること違うよなって。


 明日からまた新学期が始まる。マドもきっと教師としてこれから頑張っていくだろう。


 僕もくよくよしっぱなしではなくひとりできちんと歩いていかなきゃとそんな事ばかり……




 その日の夜、智也から「新学期だし一緒に行こうか」と連絡があった。通常、智也は僕より早く登校していたはずだけど大丈夫なのか心配で聞いてみると「別に用事があって早く出ているわけじゃないし問題ないよ」との返事。僕の時間に合わせて駅で待ってると言ってくれた。


 多分智也はマドとのこともあって僕を気にしてくれているんだろうなって思いながら「ありがとう」と智也にそう伝えるのだった。




 翌日、駅に向かうと智也が待っていた。


「優、おはよう。思ったより元気そうだな」


 そう智也は声をかけてきた。


「智也、おはよう。うん、大分落ち着いてきたって感じかな。それと遠藤さんに会ってみて彼女も頑張ってるんだなって思ったら負けてられないなって」


 と僕は智也にそう応えた。そんな僕に智也は


「そうか。遠藤さんと会ったことも悪いことばかりじゃなかったわけだ。ならよかった」


 と気にしていたのかそんなことを口にした。




 駅に入り改札を通る。ホームでふたり静かに待っているといつもの電車が入ってくる。僕らはいつもの時間いつもの車両に乗り込み、そして……電車は進んでいく。




「優。そういえば俺さ、寧々と付き合ってんだよね」


 と智也は急にそんな事を言った。まあぶっちゃけふたりは前々から仲が良かったのでそんな事もあっておかしくないと思っていた僕は


「もしかして僕に気を使ってなかなか言い出せなかった? 」


 と智也に聞いてしまう。


「ああ……遠藤さんのことやマドさんのこと色々会ったからな。でもやっぱり優には伝えておきたいって思ってな。大分落ち着いてきてるようだから……今言っておこうと思って」


 と智也は僕にそう告げた。


「気にしなくてよかったのに。ふたり仲が良いとは思っていたけどそうだったんだ。よかったよ。智也に幸せがやってきて」


 ふたりが付き合うことを聞いた僕は素直に智也におめでとうと言うことができた。というよりも僕が落ちこんでいるからって智也が気を使うことなんてないと思っていたし、嫉妬やらそんなもの感じるわけもない。大事な友達なんだから喜びしか感じないって。そんなことを思いながら。


「ありがとうな。」


 すると智也は照れながらそう僕に伝えてきた。僕はそんな幸せそうな智也を見て


「僕も幸せ見つけないとな」


 と僕は思いそう呟くのだった。




 そんな話をしているところに女子校のある駅につく。そして駅の先にある学校へと通う生徒が次々に降りていく。そんな中


「優……幸せ来たかもしれないぞ」


 と智也がいきなりそんな事を言ってきた。僕は意味がわからず


「智也? 急にどうした? 」


 と尋ねると


「ほら。外見てみろよ。俺は写真だけだったけど優ならはっきりわかるだろ? 」


 と言われたのでドアの向こう、駅の方を見るとそこにはある人がいた。そして降りていく生徒たちを掻き分け僕の方へとやって来る。




「優! 」


 そう言って僕に抱きついてくる人がいた。




 その人とはマドだった。


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