第22話 友達



 しばらくの後、遠藤さんが落ち着いたようなので山崎さんに家まで送ってもらうことにした。結局山崎さんは内容がわからずじまいだったので不満な顔をしていたが「後で智也に聞いといて」と伝えると「分かったわよ。まずは遠藤さんを癒やすのが先だし……」と不服ながらも受け入れ遠藤さんを送っていった。




 そんなふたりが去った後の喫茶店。


「なあ……これでよかったのか? 」


 智也がそう聞いてきた。僕は


「遠藤さんには悪いことをしたなあとは思ってるかな。でも増田さんに直接言う機会がないから……僕が思いつくことだとこれくらいしかなかったんだよね」


と智也に答えた。


「いや、遠藤さんのこともだけど、俺はそっちよりマドさんと縁を切ったっていうほうが……」


 と智也は遠藤さんよりも僕のことを気遣ってくれていた。


「うーん。増田さんなんて人と関わりができたってことがどうしようも無くなった原因かもしれないけどさ。それでも僕のせいで迷惑かけちゃったからね。教師と高校生徒って言う関係は難しかったのかなあ……なんて」


 僕は少し苦笑いをしながら智也に言った。


「増田かあ。あの彼氏……話聞くかな? それも心配だな」


 と智也は増田さんの動向も気になっているようだ。


「話を聞かなくてもマドと僕の縁は切れているんだからこれからどうするかはマド次第だね。それにもし増田さんと遠藤さんが別れてしまうのなら2股じゃなくなるから。そうなれば脅しとかそういうことしなければ僕には何も言うことないから。できないから。そこからはマドと増田さんの問題でしかないからね。いろいろと問題はあるだろうけどここからはマドがどうするか……しかないよ。僕が思いつく出来ることはこれだけだから」


 と僕は注文していた飲み物を一口飲んでため息をついた。




「あのさ。卒業したら再度会うとかそういうことできなかったのか? もう連絡はつかないのかよ? 」


 と智也はまだマドとのことを気にしてくれているようで、僕は


「うーん。連絡はもうお互いが確実にいる場所がわかるのって学校しかないね。家も知らないし連絡先削除したし。学校になんて押しかけるなんてお互いできないよ。それにほら。マドには気になる人がいるって話したでしょ? もしさ、その人と上手くいくことがあるなら僕は邪魔になるでしょ? 増田さんのように他の男と親しくしてほしくない、そういう人だったらさ。だからどちらにしてもいつかは離れないといけなかったんだよ。それが早くなっただけ……そういうことだよ。まあ……わけのわからない形での別れになったのは悔しいかな」


 と思っていることを口にした。


「そうだよな……結局原因って増田ってやつのせいだからな。悔しいよなあ」


 と智也は飲み物を一口つけ僕と同じ様にため息をついた。




「そうそう、寧々にはどこまで話していい? 」


 と智也は遠藤さんに伝える内容を僕に確認してきた。


「ああ、遠藤さんの友達だし内容は知っておいたほうが良いと思うから、智也が知っていること全部話していいよ」


 と僕はすべてを話していいと智也に応えた。


「わかった。まあ言わなくていいと思ったことは言わないよ」


 と智也は納得し僕にそう告げた。




「優。なにかあったら今度は話せよ。ひとりで突っ走るなよ。なにかが出来るってわけでもないけどさ。頼ってくれなかったのはちょっと寂しかったぞ」


 とすこし苦笑いしながら智也はそう言ってくれた。そんな優しさを見せる智也に感謝しか無かったわけで。


「わかったよ。それと今日はありがとう。無理させちゃってさ。山崎さんにもありがとうって伝えておいて。これで僕も心残りが無くなって安心できるってさ」


 と僕が智也にそう伝えると


「心残りが全部なんて嘘なくせに……ほんとにもう。わかったよ、伝えておくよ」


 と少し複雑な顔をして僕にそう告げたのだった。

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