第20話 釘を刺す その1



 マドとの縁を切った数日後、僕は以前途中で抜けることになった喫茶店へ智也と一緒に来ていた。今日は智也から連絡をとってもらい山崎さんに遠藤さんを呼んできてほしいとお願いしていたからだ。内容は彼氏についてだ。なお、連れてきたければ彼氏を同席してもいいと伝えている。そして会う予定となった日が今日ということだ。


「優? 詳しいこと聞いてなかったけれど大丈夫か? 」


 智也は僕に尋ねてきた。


「ああ、マドから聞いた彼氏のしたことを遠藤さんに伝えるだけだね。そうしないとマドに迷惑がかかるからさ」


「それ大丈夫か? って気にしてもしょうがないか。もうここまで準備しちゃったしな」


 と今まで僕に理由も聞かず今日という日を準備してくた智也はは言った。本当ならこんな面倒くさいことやりたくないはず。本当に智也には頭が上がらないよ。


「いつもありがとう。こんな巻き込まれたくないようなことまでお願いしちゃって」


 と僕が言うと


「気にするな。友達だろ? 」


 と智也は笑ってそう言ってくれた。




 しばらくすると山崎さんと遠藤さんがやって来て向かいの席へと座った。そして店員さんに注文を頼み、注文が来るまでみんな静かに待っていた。


 注文が届くと僕から話を始めた。


「わざわざ来てもらってごめん。どうしても遠藤さんの彼氏について伝えておきたかったことがあったから」


 と僕が言うと


「よくわからず今日は来たんですけど、私の彼氏のことですか? 」


 と遠藤さんはなぜ僕がそんな話をするのか不思議なのだろうそんな事を僕に言った。


「うん。まずはね。これを見て」


 そう言って僕は眼鏡をかけた。彼女たちが来る前にトイレでコンタクトを外して準備していた僕。


「え? 電車の? 」


 と遠藤さんは僕を見て気付いたんだろう驚いたようにそう言った。


「そう、通学時に電車でよくお会いしてましたよね? コンタクトだとほとんどの人が気付いてくれないんですよ」


 と僕はそう告げた。山崎さんは意味がわからないという感じだったが、横で大人しく聞いていることにしたんだろう言葉を発することはなかった。


「えっと僕はこういうことで遠藤さんの彼氏がどんな外見かを知っていました。紹介してもらいましたから。それにコンタクトの時にたまたま同じ電車に乗った時、遠藤さんが僕を避けている理由を彼氏と話されていて聞いてしまいました。彼氏の嫉妬でってことで」


 と僕は言うと


「あの時はごめんなさい。彼氏が他の男と親しくするなって言われて……」


 と遠藤さんは謝りだしたが、今の僕にはどうでもいいことで


「気にされなくていいですよ」


 と僕が言うと遠藤さんは顔を上げた。


「この姿を見せたのは僕が彼氏のことを知っているということを理解してほしかったからです。それでですね。写真に映っていた女性ですけど、浮気かもしれないと遠藤さんが持っていたやつですね。私、女性の方も知っているんですよ」


 と僕が言うと遠藤さんは


「え? 知っているんですか? 」


 と立ち上がり大きな声で僕に言った。そんな驚愕した遠藤さんに


「落ち着いて座って。遠藤さん」


 山崎さんが席に座るように促した。


「あっごめんなさい」


 と遠藤さんは申し訳無さそうにそう言って席に座り直す。すると山崎さんは


「ごめん、わたしさっぱりなんだけど」


 と言ってきたのだが、智也が


「寧々、悪いけど話が終わるまで我慢してくれないか? 」


 と山崎さんに話を聞いてもらえるよう伝えると


「はあ……わかったわ。後で説明してよね。私だけ蚊帳の外っぽいから……」


 と了承し、話を続けることになったのだった。








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