第19話 一方通行な考え



 夜、食事を済ませスマホを見てみた。すると智也からメッセージが着信していた。そう言えば昨日途中で帰ったから心配してくれてたんだと僕は申し訳なくなりすぐに智也に「大丈夫だから」と返信した。すると即返信があり「無理するなよ。こっちは何事もなく終わったから」と昨日のその後が問題なく終わったことを教えてもらった。

 「そうか。了解。今度なにかおごるよ」と返せば「バーガー2つで許してやるよ」と智也から返事。「わかったよ、ありがとな」と僕のお礼を最後に智也との会話は終わる。




 僕はマドから連絡がはいるまでベッドでぼーっとしていた。とりあえず素直に聞いてみようと思った。いろいろと悩んでも悶々とするだけだと。そしてマドがどう思っているかも知りたいという気持ちもあるし。

 それに僕としてはもう遠藤さんの彼氏、増田とは縁を断ち切りたいと思えていたから。




 ピコン


 スマホに着信が来る。確認するとマドからだった。


「こんばんは」


 そうメッセージが届いていた。僕は


「こんばんは」


 とメッセージを返す。そして


「マド? 増田さんと会ってた? 」


 僕はド直球に聞いてみた。すると


「優? ちょっと通話していい? 」


 と返事が返ってきた。確かに直接話しをしたほうが良いと思い


「うん。いいよ」


 と僕は返すといつものように即着信が鳴った。


「もしもし? 」


「あっ優。急にどうしたの? そんな事聞いて」


 とマドはそう僕に尋ねてくる。僕は昨日あったことを素直に話すことにした。


「昨日ね。増田さんの彼女、遠藤さんって言うんだけど偶然会ったんだ。それでね、遠藤さんが落ちこんでいたんだけど、理由は増田さんが浮気しているかもって不安になってたようで。そしてね、遠藤さんが増田さんと女性が会っている写真を撮っていたんだよ。まあ言わなくてもわかると思うけど相手はマドだった」


 僕が話し終わるとマドは


「そっか。見られてたんだね。あの……理由を言わないと駄目かな? 」


 と理由を言いたくないような感じで僕にそう言った。


「ふぅ……僕がマドとの付き合いになにか言えるそんな人じゃないから理由が言えないなら言わなくていいよ。でもね、僕は増田さんとの縁は断ち切りたいんだ。だからマドが増田さんと付き合うなら……」


 と僕がそこまでいうと


「ちょっと待って。理由言うから。だからそれ以上言わないで」


 とマドから叫びが返ってきた。


「ちゃんと話を聞いてくれる? 話は多分短いけれど安易な考えはやめてね」


 となぜか僕を思いやっているようなそんな感じで僕に言った。


「ごめん、聞かないとなんとも言えないけど……聞いてみるよ」


 と僕はそう告げるしかなかった。聞かないと僕の心がどうなるかわからないから。


「えっとね。増田くんが私にデートをしてって言い寄られてたでしょ? それでね。この間また誘われたんだけど、そのときにね。電車で私と優が居るところ見られたでしょ? どこから知られたか知らないんだけど優が高校生って知られてたのよ。それで、デートしないと優のこと言いふらすって言われてね。彼氏とかじゃないと言っても聞いてくれなくて。断ることもできたけど優に迷惑かけたくなくて……仕方なく一度だけデートしたのよ。あっデートだけだからね。それ以上は断ったから。私は増田くんのことなんにも思ってないから。それは信じて。はぁ……隠してたのはただ、優に嫌な思いさせるから言いたくなかった。そういうことなの」


 それを聞いて僕は思った。また増田なのかと。そしてそれよりも思ったのはマドを困らせたのは僕のせいだったのかと。マドが無理やり付き合わせられたのは僕のせいだったのかと。教師だから周りに変な噂がたてはマドが困るのに僕のことを考えてそうしてくれていたなんて。


 僕は自分のことしか考えていなかった。なんだよ、僕って。マドの役に立つどころか困らせていたんだ。


「マド。もう付き合わなくていいから。僕とは関係ないって押し通して。マドが増田さんを好きになったなら付き合っても別に良いから」


 と僕はそんなことをマドに伝えていた。


「だから優。安易に考えないで」


 マドはそう言うけれど僕が居るとマドには迷惑しかかからないって思えたから。


「もうマドには関わらないから。SNSのやり取りももうやめよう。マドの重荷にはなりたくない。大事な人に僕のことで無理をさせたくない。だからもう終わろう」


「ちょっと待って。私はそれは嫌だから」


「僕のことは忘れて。ほら気になる人がマドにはいたでしょ。そちらに集中していいかげん増田さんからは離れよう? 」


「だから嫌だって。優、そばに居てくれないの? 」


「そうだ、増田さんには僕から釘刺しとくよ。これくらいしかできないけどマドへのお礼。出会ってくれてありがとう」


 僕が出来ることくらいはしておこう、そんな事を考えながら


「この通話が終わったらSNS消しておくから。本当にありがとう。マド、大好きだよ」


 そう言ってマドがなにか言っているけれどそれを押し切って通話を切りSNSのIDを消してしまう。


 そう僕はマドとの関係を一方的に切ってしまうのだった。

 

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