第16話 まさかの友達
夏休みに入ると僕は特にすること無く……いや勉強はちゃんとしてのんびりと過ごしていた。バイトなんかも始めてもいいかなと思ったけれど最後の夏休みだしのんびりしようと結局は止めることにした。
そういえばマドは夏休みでも学校に出て仕事をしているらしい。まあ、社会人は夏休みなんてないんだよなと今更感じたマドとの違いでもあった。それでも夜にはマドとのメッセージのやり取りが続いている。マドはよく「宿題は早く終わらせるように」と先生のように……ではなく先生らしくちょくちょく言ってきたのがおかしかった。おまけに「さすが先生」と僕がいうと「もう、からかわないの」と少しムスッとしていうマドは可愛らしかったのだった。
夏休みに入ってしばらく経った頃、智也から連絡が入った。「出掛けないか? 」と。別に暇なので僕は了承し待ち合わせ場所の駅へと向かう。
「おっ優。きたね。急に呼んで悪いな」
「いや別に用事もなくのんびりしていただけだから」
と気にしないでと智也に伝えた。
「そうそう、今日は寧々も来るんだよ」
「寧々って山崎さん? 」
「そう、こないだ優と会ったって聞いたよ? 」
「ああ、コンタクトの僕を見て僕だと分かったから驚いたんだよね」
と僕が驚いたことを言うと
「ほう、見る目あるな。寧々は」
と智也はなぜか嬉しそうに笑っていた。
「なんだよ。その笑いは? 」
と僕が聞いてみると
「いや俺とマドさん。それ以外にも優のことが分かる人が居たんだなって嬉しくなってね」
なんて事を言う智也。俺はそんなことで喜んでくれる智也に
「はははっ、ほんと。ありがとな」
と言葉を告げるのだった。
「で、どこいくの? 」
と僕は智也に聞いてみた。
「えっと寧々が友達を迎えに行ってからここに来るって言ってたよ。それからカラオケでも行くんじゃないかな? 寧々好きだし」
となんだか山崎さん次第な智也の返事。
「ん? なんか山崎さん次第って感じに聞こえたんだけど? 」
と僕がいうと
「まあ……そういうことだ。本当のこというと俺、寧々に無理やり誘われたんだよ。友達が落ちこんでるんでちょっと出掛けたいんだけど誰か誘って付き合ってってさ」
と智也は今日の予定がなぜできたかを俺に説明してきた。
「で、僕が呼ばれたわけね。でもその友達って僕たち知らないのに慰めになるの? 」
と僕は疑問に思うことを聞いてみた。
「うーん、わからん。でも寧々強引だから断るにも断れないから。それに慰めで付き合ってと言われたらなかなか断れないよなあ」
と智也は言った。まあ、確かに慰めで付き合ってという話を無下に断るのは難しいよなあと僕も思ったわけで。
「確かにね。了解だよ。まあ何が出来るかわからないけどね」
そんな会話をしていると
「智也くん。あれ? 誘ったの山下くんだったの? こんにちは。今日はよろしくね」
と声をかけてきた山崎さん。そしてその横に連れてきた友達がいた。しかし
「おい……あれ」
智也も気付いたようで
「ああ……そうだね。はぁまさかなあ」
山崎さんの横に居たのはあの一目惚れの彼女だった。
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