第15話 もっと嬉しい言葉があったんだ



 その夜僕はマドに山崎さんと会話したことをメッセージで話していた。するとマドは


「ごめん、よかったら通話していい? 」


 と伝えてきた。別に問題もなく僕としてもマドの声が聞けることは嬉しいことなので


「いいよ」


 と素直に返事を返すと、以前と同じ様にすぐスマホに着信が届く。うーん、マド早いって。絶対僕には無理だよななんて思いながら着信を取った。




「こんばんは、優」


「うん、マドこんばんは。にしても今日はどうしたの? 別に大した事ないかなって思ったけど気になったことあった? 」


「ううん。別になにもないけど声が聞きたくなっただけ」


 と言うけれどなにかマドの声が弱々しく感じる。


「マド? なにかあった? 」


 と僕は聞いてみるが


「ううん、なにもないって。ほんとにもう」


 と今度はなにか怒っている感じに変わる。うん、わかんないや。


「でもそのこと気にしてたんだ。ごめんね、気付かなくて」


 とマドは比較されることを嫌がっている僕に気付いてそう言うが


「ううん。僕自身も言われるまで気付いてなかったから。変わったって言われたり前より良いよって言われるとなにか違和感があったのは確かだけど。今日、多分初めて前の僕を肯定されたような言葉をもらったと思うんだ。だからそれが分かったってところだよ。気にしないでね」


 と僕はそう言ってマドに気にしないでほしいと伝えた。すると


「あのね。私としてはどっちでも良いと思っていたから。どっちも優だって思っていたから。ただ、あの時落ちこんでいたから世界を変えたら心も変われるかなあと言ってみただけだったんだけど……ごめんね」


 とマドは自分が勧めたこともあってかやっぱり落ちこんでいるように僕は感じていた。だから僕は


「ううん、多分外見は変えてよかったんだと思ってるよ。だって今は一目惚れの彼女のことはすっかり忘れることができているんだから」


 とマドに素直にそう伝える。すると


「あのね。私はどっちの優も好きだよ。というより外見なんて関係ないから。例えばね。私が眼鏡をかけたとして優は眼鏡の時とかけていない時どっちがいいかなんて考える? 」


 とマドはそう尋ねてきた。僕は考える。というより考えなくても答えば出ていたけど。


「ううん。きっとどっちのマドも大事な人だってきっと思うだろうな。実際見ていないから想像だけど。ただ僕も外見でマドを判断したりしないんじゃないかなって思うな」


「でしょ? 私もそうだよ。優は優。どっちも同じだから」


 とマドは言ってくれた。ただ


「でもさ、僕ってマドには情けないところしか見られてない気がするんだけど」


 僕はそんな事を思いそう告げると


「うーん、情けないとは思わなかったけどな。それだけ物事を真剣に考えられる優は格好いいと思うよ? 」


 とマドはそう言ってくれた。




 山崎さんは前のほうが僕らしいと言ってくれた。とても嬉しかった。でも……それよりもずっと嬉しい言葉があって……


それを僕にすぐに渡してくれたマド。


「どっちも変わらない、どっちも好き。そう同じ」


 そういえばマドに


「でも、逆に僕の家族や智也とマドは変わらない。外見が変わったからって変わらない人たちが居てくれるんだって。嬉しくって」


 僕はそう伝えたっけ。


 ほんとマドはいつもそのままの僕を受け入れてくれるよね。




「マド。ありがとう」


 そんな事を考えながら僕はマドにそう伝えたのだった。


 

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