第13話 落ち着いた1日



 智也に話を聞いてもらってから僕は大分自分を取り戻してきたかなって思えるようになった。マドのことを大事な人っていうのは理解していた。けれど、智也から「マドさんのことが好きになってるからじゃんか」と言われて僕の本当の気持ちをきちんと理解できたこと、それが大きいんだろうなと僕は思えた。

 おかげで昼からの授業はいつもどおりに受けることができいつもの生活ペースへと戻っていた。




 放課後になり帰ろうとしていたところ今日の僕を心配してか智也が


「優、一緒に帰ろうか? 」


 と誘ってくれたので


「うん。帰ろうか」


 と素直に誘いに乗って一緒に帰ることにした。普通なら寄り道でもしようという智也だけど、僕の状態を考えただろうか寄り道もしようとは言わずすんなりと電車に乗り帰ることとなった。すると智也が


「もう大丈夫そうだな? 」


 と僕に尋ねてきた。だから心配してくれるそんな智也に


「うん。きちんと心から理解できたら楽になったよ。智也ありがとうな」


 とお礼を述べた。すると照れながらも


「そんな改まって言われると照れるだろうが。まあ、俺達友達じゃんか。気にしなくていいよ」


 と僕に言ってくれた。そして


「そういや俺まだマドさんに会ってないぞ。今度ちゃんと紹介してくれよ? 「優をお願いします」って言わないといけないしな」


 なんて笑いながら冗談を言ってくれる。


「なんだよそれ? 智也はおとんかよ」


 と僕は返しながらも一緒に笑っていたのだった。




 ああ……本当に僕のことを考えてくれていて……そう僕にとって大切な友達なんだなってそう思えたそんな日だった。




 そんなその日の夜、いつものようにマドからメッセージが着信する。


「大丈夫? 」


 だから僕は


「もう大丈夫だよ。友達の智也に話を聞いてもらって気持ち的に解決できたから。心配かけてごめんね。そしてありがとう」


 とメッセージを返した。すると


「優。ちょっとだけ通話かけても良い? 」


 とマドからメッセージが届く。今日気持ちがわかってしまったからかドキドキしている僕が居るけれど別に断ることもないので


「うん。いいよ」


 とメッセージをまた返す。するとすぐに通話の着信があった。というか早いよマドと思いながら通話を取った。


「もしもし? 」


「ああ、優。よかった。声は元気そうに聞こえるよ。でもちょっと声が震えてる? 」


 とマドは僕が緊張していて声が震えていたのが分かったみたいだった。


「いや震えてないと思うけど。にしてもマドは心配し過ぎだよ」


「そりゃあの様子だったら心配するよ。今日一日心配して仕事が手につかないくらいだったんだから」


 とちょっとむすっとした感じで僕に告げた。


「確かに昨日の僕は変だったもんな。ごめんごめん。でももう大丈夫だよ」


 僕がそう告げると


「理由は私に言えること? 」


 とマドはやっぱりきになるようで理由を聞いてきた。うん、言えない。流石にマドが好きだったからだなんて言えないから。それにマドには気になる人がいるんだからもし僕が告白してしまえば今の関係も終わっちゃうでしょ? それに高校教師と他校ではあるけれど高校の生徒だと多分困るよね? と僕はいろんな事を考えながらも


「これは言えないかも。ただね、もう一目惚れの彼女のことは忘れることができていたってことは言えるよ」


 と僕はマドに答えた。するとマドは


「あーー。悔しいなあ。私じゃ聞けもしないし助けもできなかったのかあ。優の友達……えーと智也くんだっけ? 負けちゃったなあ」


 なんてことを言っていた。だから僕は


「ううん、確かに智也に話を聞いてもらって元気になれたのは確かだけどそれ以外にマドが居るから元気になれたってのも実はあるんだよ? だからありがとう」


 とすこし照れながら伝えると


「え? それってなに? 私が役に立てたことって? 」


 と勢いよく聞いてくるマドに


「マドが居てくれたってこと……僕と出会ってくれたってことかな。言ったと思うけれど、マドは僕にとって大事な人だから。ただ2回しか会ってないし情けないところしか見られてない気もするけれどね」


 と好きとは言えずとも大事な人だと遠回しにも僕の気持ちを伝える。だけどよくよく考えるとこんな僕をマドが好きになる要素ってまずないななんて考えてしまうと思わず苦笑してしまった。それを聞いたマドは不思議そうに


「なんで笑ってるのよ? ねえ? 」


 と僕に突っ込んでくるのだった。




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