第09話 ふたりの頑張る
「私も頑張らないとかなあ……」
急にマドはそんな事を言った。
「ん? なにかあるの? 」
気になった僕はマドに尋ねてみた。
「んー。私も恋愛頑張ろうかなあって」
そう言えばマドの恋愛話なんてろくに聞いたことなかったなあ。
「好きな人でも居るの? 」
「うーん、気になってるって感じかな? でもいろいろと事情あるから好きだとしてもすぐには告白なんて出来ないけどね」
どうもマドには気になっている人が居るようで。そうなのかと
「なら僕も頑張らなくちゃなあ」
僕も一言つぶやいた。
「優は何を頑張るの? 」
気になったのだろうマドが僕に問いかけた。
「マドから離れる方法」
僕がそう言うとマドはびっくりしたように僕を見た。
「はははっ別にマドが嫌いとか離れたいとかそんなんじゃないよ。でもさ、きっと彼氏ができたら他の男と仲が良いなんて嫌がると思うんだ。きっと今のようにはもう頼れないはずだよ。それと一目惚れの彼女のようにさ。急に彼氏見せられて急に居なくなって直接理由聞かされないでいきなり消えてしまうなんて今度は嫌だからさ。大事だと感じた人にそうされると流石にしんどいからね。そう、だからさ、マドに一人でも大丈夫だよって言えるように。そんなふうにならなくちゃって。離れるとしても今度はきちんとわかりあって離れたいから。本当はこれ以上縁が濃くなる前にさっさと離れたほうが良いのかもしれない……んだろうけど今の僕じゃ情けないからなあ。マドが離してくれない気がする」
苦笑しながらそんな事を告げる僕に
「そんな事気にしなくていいの! 私は何も言わず消えたりしないし簡単に離れようとは思わないから」
そう言うマド。
「でも先のことはわからないよ。相手もあることだし、というか僕は実体験したわけだし。まあ、離れる離れないにしてもひとりでも歩けるよってくらいにはマドの前で見せられるように……なりたいなあ」
と僕がそう呟くとマドは僕の方を向き、僕を頭から抱きしめてくれた。
「なんでそんな寂しいこと言うかなあ……元気そうに見えてもまだ心に残っているんだろうね、きっと……彼女の、ううん彼女との出来事が」
「良くはわかんないけれど同じ目には会いたくないとは思っているかな? 」
「はははっそりゃ私だって会いたいもんじゃないから……誰だって嫌がることだよ」
「確かに……でもこれを乗り越えないとね、これからはひとりででも」
そう言おうとする僕に
「ひとりじゃなくて良いんだよ。ひとりで強くいる必要なんてないんだよ。周りの人を頼って良いんだよ。人なんてひとりでなんて行きていけない生き物だよ。無理なんてする必要ないから。優は優らしく行きていけばそれで良いんだからさ」
とマドは僕をあやすように優しくそう言ってくれた。
それでも思う。このまま甘えてて良いのだろうかと。マドに気になる人がいると聞いて余計にそう考える僕がいた。
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