第08話 いろいろと考えていたんだね
電車を降りふたり駅から海へと向かった。今日もあのときのように天気も良く気持ちが良い風が吹いていた。
「ここに優が座ってたんだよね」
そう言ってマドは出会った時に僕が座っていた場所へと向かい座り込んだ。僕もその後を付いていき横に並んで座った。
「そうだね」
「あの時は優落ちこんでたなね。離れていてもすぐわかるほどつらそうな顔してた」
「そうだね」
「学校サボってたんだよね」
少し苦笑しながらマドは言った。
「あのときの僕と今の僕、なにが違うんだろって考えたことあった。だってこの前彼女と出会っても取り乱さなかった僕はすごいなって思ったから」
そういう僕をマドは黙って見つめながら聞いていた。
「コンタクトにして外見変えてみてさ。新しい世界がみえるかもってマドは言ったよね」
僕がそう言うとマドは
「なにか分かった? 」
と僕に一言尋ねる。
「外見で周囲の人の見方が変わろうと僕は変わらないって。そして外見で変わった世界はどうも嫌で……声をかけられてもそれは今の外見だからってなんだか反発しちゃう僕が居て。でもさ。前の僕もその人達の仲間だったんだなって思った。だって彼女に一目惚れしたのって外見だよね? それが分かって余計に嫌になって。人のことなんて言えないんだって。それに一目惚れの彼女も僕が外見変わったら気づかなかった。そんなもんなんだなあって」
僕は一息入れて
「でも、逆に僕の家族や友達に智也っているんだけどそいつとマドは変わらない。外見が変わったからって変わらない人たちが居てくれるんだって。嬉しくって」
と僕がいうと
「でも私もだけど、家族だって以前も前も姿を知っていたからじゃないの? 」
マドはそう言うけれど
「それは少なからずあるとは思う。それでもメガネ姿のときと変わらない同じ僕として見てくれることってとても大きいことなんだって思ったんだ」
僕が話し終えるとマドは
「いろいろと考えていたんだね。私は別になにかしたつもりはないんだけど優にとって良かったならそれでいいよ」
と言ってくれた。
「うん。その大事なものが分かったから、多分一目惚れの彼女に会っても取り乱さなかったんだなってそう思うんだ。名前わかんないから一目惚れの彼女って……いい加減この呼び方変えたいもんだ」
僕はそう言って苦笑した。そんな僕にマドは
「そんなに今の姿が嫌なら元のメガネ姿に戻る? 」
と聞いてきた。でも僕は
「それは必要ないかな? ちゃんと見てくれる人がいるって分かったから……必要ないかな」
とマドに伝えた。
そんな僕を見て
「優もほんといろいろと考えていたんだね……」
マドはまたそう呟いた。何かを考えながら……
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