第10話 意味がわからない
結局終点まで来た割に早い時間で帰ることにした。マドが僕を心配していたから。僕はマドが言うことに素直に従っていた。それは僕としてもマドに心配をかけ続けるのは本意ではないわけで。
僕はお腹もすく様子がなかったので飲み物だけ買って到着した電車に乗り込む。マドも軽く口にできるものを買ったようだ。
しばらくして電車が走り出す。あの海を置いて。
「なんか逆に心配かけたみたいでごめんね」
僕はマドにそう告げる。マドは
「ううん、気にしないで。逆に今日のあなたを見れてよかったと思うから」
と優しく言ってくれたマド。ほんと僕はマドに支えられているんだなってそう思う言葉を伝えられていた。
マドも多分僕にどう声をかけて良いのかわからなかったのかもしれない。そんな無言なマドと僕を乗せて電車は走る。そしてただ時間は過ぎていく。
「あれ? マドカちゃん? 」
急にそんな声が聞こえてきた。マドの知り合いだろうかと顔を上げてみると見たことのある顔の男がそこにいた。
「もしかして横の人彼氏? 」
そんな事を言う男。
「違いますよ。というよりマドカちゃんなんて呼ばないでください」
「そんなこと言わなくてもいいじゃないですか? マドカちゃん? 」
とマドにかまっている男。
「彼氏じゃないなら俺とデートしよう? 」
は? なんでお前はそんなこと言う? 俺は困惑していた。なんでなんでなんでと。
そこからのふたりの会話はよく覚えていない。というよりも聞きたくないと自分から遮っていたのかもしれない。そんなぼーっとした僕に
「優? どうしたの? 大丈夫? 」
僕をゆすりながらそう告げるマド。僕は
「あの男マドの好きな人? 」
なんてわけのわからない言葉を僕は吐いた。
「ううん、仕事上付き合いがあるだけの人よ? それがどうしたの? 彼はもういないわよ? 」
いつの間にかあの男はいなくなっていたようだ。
「なんで……なんでマドをデートに誘ってる? なんで口説く? わけわかんないや」
「優? 大丈夫? あの人となにかあったの? 」
僕がぶつぶつと変なことを呟いていることにマドは慌てていた。
「ごめん……マドはもうすぐ降りるよね。気にしなくていいから帰って」
と僕が告げるも
「こんな状態の優を置いていけるわけないじゃない! 」
そう言ってくれるマド。それでも
「いいよ。帰って。僕もこのまま家に帰るだけだから」
と僕は再度告げた。
「なら理由だけでも教えて。どうしたの? こんなになって……」
僕の体は冷たくなっているようでぺたぺたとマドは体を触ってきた。
「あの男は一目惚れの彼女の彼氏だよ。彼女に僕に近づかないようにって言ってた彼氏だよ。それでなんでマドを誘ってるの? 二股? 意味分かんないよ」
僕はそう言った後頭を抱えこむのだった。
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