第06話 遭遇



 学校帰り、智也と約束通りバーガーショップでハンバーガーを奢ってやった。席について食べる間に一目惚れの彼女のことやマドのことを説明した。一目惚れの彼女については碌な関係が作れなかったこともあり「しょうがないよなあ」とふたり納得するしかなかったわけで。

 マドについては今もSNSをしていると話すと「一目惚れの彼女とは駄目だったけれどマドさんとはうまく行っているようじゃん。少し安心したよ」と智也は言ってくれた。恋愛関係とかそういうんじゃないけれどマドさんがいたからここまで元気になれたと僕も思っているから「マドと出会えてよかったよ」と智也にも素直に言えた僕だった。




 帰りの駅は一緒なので僕と智也は帰宅のために電車に乗りこんだ。するとその途中に一目惚れの彼女が降りる駅でまさかの遭遇。一目惚れの彼女が同じ車両に乗ってきた。一緒に彼氏も連れて。

 智也は「もしかしてあの娘だったっけ? 」と聞いてきたので僕は無言でこくんと頷いた。

 少し前までは毎日欠かさず眺めていた彼女。彼氏ができたと聞いた翌日から居なくなった彼女。とりあえず元気にしているようでよかったなと思う僕。怪我とかじゃなかったんだって。

 でも僕は一目惚れの彼女に気付くことが出来たけれど、向こうは全く気付く様子がなかった。これもコンタクトのおかげなのかな? おかげってのも変か。本当に僕は様変わりしているんだなってよく分かる光景だった。


「まだ気にしているのか? 電車に乗るといつも不安な顔をして」


「だって急にいなくなったから……心配させたりしていないかなあって」


「でも俺は別の男と仲良くしてほしくないから……もう会ってほしくないな」


「わかってる。だから行かないんだから」


 ふたりの声が聞こえてきた。どうも僕のことを一目惚れの彼女は気にしているようで。それでも彼氏が大事だからいつもの時間いつもの車両に現れなくなった……そういうことかと納得した。

 理由がわかったし僕は少し安堵した。確かに避けられたことは悲しいけれどそれでも彼女は僕のことを全く気にしていないわけじゃなかったんだって。怪我もなく元気に彼氏と過ごしていたんだって。

 もう不安なことはなくなったんだって。


 彼氏と一目惚れの彼女はいつも乗ってきていた駅で降りていった。


 名前も知らない彼女。一目惚れした彼女。さようなら。




 そしてありがとう。




 僕の恋はこれで終われるかな……そう思う僕だった。

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