第05話 どうも見た目が全然違うらしい



 初めてコンタクトで登校する僕。コンタクトで見る世界は広かった。今まで視野的にも狭かったせいもあると思う。フレームなんか邪魔だったし。

 それ以上に大きいのはレンズじゃないかな? 目の前にあった靄のかかったようなものが無くなったそんな感じ。こんなに変わるものかと僕は思う。


 視野が広く感じるようになったせいか、それとも僕が周囲に鈍感だったのかわからないけれどなぜか今まで感じなかった人から見られる視線を感じるような気がした。自意識過剰かと言いたくなるけれど感じるものは仕方なくて。

 なるべく気にしないよう僕は一目惚れの彼女が現れないいつもの時間、いつもの車両に乗って学校へ向かった。


 そうそう、コンタクトに変わった姿の写真を先にマドに送っておいた。アドバイスをくれたマドだからかよくわからない。なぜか一番最初に僕を見てほしいなんて気持ちがあって。

 マドは「似合ってる。もしかするとモテモテになるかもしれないなあ……そしたら私なんて忘れるのかな? 」なんてメッセージを飛ばしてきた。僕は慌てて「そんなわけないじゃない。忘れるわけないよ」と返すと喜んでくれたようで安心した僕だった。

 にしても僕の心の中のマドの比重が少しずつ大きくなってきている気がする。でも、それが嫌なんて思えず、逆に嬉しい気持ちになっているのは少しずつ僕も変わってきているということなのかもしれない。


 学校に着き教室に入るとクラスの皆が僕を見ていた。表情は「あいつ誰だ? 」みたいな感じで。そんなに見た目が変わっているの? と僕自身にはよくわからない。とりあえず、席に座るとみんな驚いているようで。


 でもその中でひとり声をかけてきた人がいた。それは友人の智也ともや


「おはよ、おっ眼鏡止めたのか。前からこっちのほうが良いと思っていたからなあ。やっと決心ついたんだなあ」


「ああ、ある人から勧められてね」


「え? 俺からの勧めは断っといてある人からは聞いたのか? 納得いかんなあ。で、ちなみに誰だ? 」


 ある人が気になったのかそう聞いてくる智也。


「僕、こないだ休んだだろ? あの時さ。終点まで行っちゃってね。その時に会った人」


 そう言うと智也は


「まじか? 初めて会った人に俺は負けたのか? 悔しすぎる……」


 と少し落ちこんだように言った。


「智也、いろいろ事情があるんだよ。ちょっと耳貸せ」


 と呼んで智也が近づいてきたところに


「僕が電車で見ていた娘いただろ? あの娘ね。彼氏がいたんだよ。まっ振られたんで心機一転変わってみようとしたことが大きいんだよ。コンタクトに変えてみたのってね」


 と智也に小声で伝えた。それを聞いた智也は


「そういうことね。悪い。嫌なこと言わせたな。それじゃしょうがないなあ……今回はハンバーガー1つで許してやることにするよ」


 と僕におごれと言ってきた。まあ智也だし仕方ないかと


「分かったよ、帰りにでも寄ってく? 」


「おっけー。そうそう言い忘れてたけどコンタクトにした優は結構イケメンなんだぞ? クラスのみんなも驚いてるようだぞ。朝も視線感じなかったか? 」


「うーん、気のせいだと思ってたんだけど……」


「まあそのうち分かるさ、じゃまた後でな」


 そう言って席に戻っていった智也。




 智也はかっこよくなったと言ってくれるけれど「世界が変われば」と思ってコンタクトにしたわけであって、外見が変わったからと近寄ってこられても困るし嫌だなあと思うそんな僕がいたのだった。

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