第01話 終点の海



 落ち込みすぎた僕は全く周りが見えなかった。気づけば肩を揺すられる感覚を受ける。


「お客さん、終点だよ」


 駅員さんにそう言われていた僕。なんだかわからないぼーっとした状態ながらも仕方なく電車を降りる。


 周りを見れば北に海があって。駅を挟んで南には小さな集落。時間は9時。あれから1時間程経っているようだった。とりあえず学校へ連絡をし、体調が悪いと休む連絡を入れた。サボりになるけど仕方がない。


 戻る電車が何時にあるか見てみるとどうも1時間に1本くらいしか走って無いようでしばらく待つしかすることがないそんな状態だった。




 僕は周辺を再度見渡した。なにかすることはないかなあと。そうしているうちに僕は北に見える海を見ていた。なぜか惹かれる今の僕。


 だからここまできたらと僕は駅を出て海へと向かうことにした。




 ひとっこいない寂しい海。それでも日差しが暖かく海が照らし返す光が眩しい。その光景は人がいない寂しさは僕と一緒のようだけど、それだけに囚われない海はやっぱり僕とは違うなあと思いながら近くの防波堤に腰を下ろす。




 ああ……彼氏がいたんだなあと落ち着いたせいか彼女との出来事を思い出してしまう。やっと挨拶程度は出来るようになったのになあと残念な気持ちやらやっぱりかっこよくないと駄目なんだろうかなんて自分を卑下してしまう悲しい気持ちやらが僕の心で行ったり来たり行ったり来たり……眼の前にある海の波のようにゆらゆらと……


 それでも海を見ていると少しは落ち着けたのかなあと電車で落ち込んでいたときよりマシにはなっているなと理解できた。




 僕がそんな時間を過ごしているといきなり後ろから声がかけられた。


「なんで学生がこんなところにいるの? さてはサボりかな? 」


 僕は驚き後ろを振り返ると綺麗な年上のお姉さんが少し怒り気味に立っていたのだった。




「サボるつもりはなかったんですけどね。電車で……まあ乗り過ごしてここまで来てしまったので諦めてぼーっとしてたんです」


 サボったのは確かなので僕は彼女にそう答える。


「もしかして寝過ごし? それにしてはあれだね。君の高校ならここから一時間程度かかるだろ? ふふふっなんか逆に感心するね。そこまで眠りこけれるなんてさ」


 俺の答えに寝過ごしだと思ったのだろう彼女は呆れて笑っていた。もうなんて思われても良い僕は気にせずまた海を眺め始めた。すると彼女は僕の横に座り


「綺麗でしょ? 田舎の海は綺麗だよね。ここだけは私も自慢なんだ」


 さっきまで怒った顔はどこへやら彼女は海を眺めながら僕にそう話す。


「ええ……嫌なことがあったもんで心が洗われるそんな感じがします。気持ちいい……」


 そんな僕の言葉に答えるように風も優しく撫でるように側を流れていく。


「んーでもサボったのは良くないなあ。と言っても電車の本数も少ないしあってもここから1時間はかかるからってもう今更かな」


 そう言った後


「まあ、これもなにかの縁だろうしそんなに嫌なことがあったならお姉さんに話してみる? 話せば少しはスッキリするかもしれないよ? 」


 と今会ったばかりの全く知らない僕にそんな事を言ってくれるのだった。

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