第2話家族にできた秘密

今日は検査の日。よくなってるといいな。と、ありえないことを考える。でも、あんまり病気が進行してないといいな。看護師さんに名前を呼ばれた。「はい。」と返事をして検査室に入る・・・。

「小澤さん、まずは、あなただけに結果をお伝えしますが、あまり、病状はよくないかと。いつ、何があってもおかしくない状態です。延命治療をしてもあまり、意味がないと思いますが、、、。どうされますか。」

私は深呼吸をしながら天井を見た。そっか、だめだったか。頑張ってきたつもりだったんだけどなあ。神様はそう甘くないみたい。

「わかりました。延命はもうしなくていいです。このことは、家族には内緒にしてもらっていいですか。」

「心桃ちゃん、ご家族に本当に言わなくていいの?」

「はい。」

私が家族のためにできることは心配と迷惑をかけないこと。あと少しの命なら、、、尚更、私一人で頑張らないとね。

「心桃ちゃん、何かあったら、私に言ってね。」

「はい。大丈夫です。」

看護師さんは少し困ったような顔をしながら笑ってくれた。

「では、失礼します。」

部屋を出たら、なんだか気が抜けて、泣きそうになってしまった。泣くな、私。頑張れ、私。病室に入ると、千隼が心配そうな顔をしていた。まったく、、、そんな顔されたら余計に言えなくなるよ。

「大丈夫だったよ。逆に少し良くなったらしい。先生も不思議がってた。千隼のおかげかな。」

「よかった。安心した。でもなんかあったら言えよ?」

「うん。」

千隼が笑顔になると、私も自然と笑顔になれた。

「千隼、ありがとう。」

千隼は一度驚いたような顔をした。

「んだよ。それ。」

「何でもないよ。」

「今日は帰るけど、何かあったら連絡しろよ。」

「うん。」

行かないで。なんて言えない。言いたいけど、言ったら多分ばれちゃうから。ずっと一緒にいてもらったら私に泣いちゃうもの。

「気を付けてね。」

「んだよ。今日、なんか変だぞ。」

「そんなことないよ。」

千隼が病室から出ると、何の音もしなくなった。あ、いい方法を思いついた。私はスマホを取り出してビデオ撮影を始めた。「えーっと今さっき、検査結果を聞いてきて、あんまりよくないって言われた。いつ何がおかしくないってさ、だから、延命はもうしない。勝手に決めて、ごめん。私はすぐに死ぬとかは考えてないし、これから考える気もないけど、本当にいつ死ぬか、、、分からないからさ。これから毎日こうやってビデオをとることにした。じゃ。」撮影を止めると私は深く息を吐いた。ああ、これからどうしよう。ただ死ぬのを待つっていうのもね、、、。家族に秘密ができてしまった。私がもうすぐ死んじゃうっていう秘密。ばれないように隠すのは、家族のため。隠し通さなければならない。さあ、頑張ろう。


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