第30話囚われの姫?
双子がアルベルト男爵の養子になるにあたって、彼らが今後どの様に暮らしていくのがベストかとを真剣に話し合っているのだが、とにかく可愛がりたいらしい男爵の案が尽く双子を真綿で包んでる状態なので、その度に深層の御令嬢じゃねーんだよ!とツッコんで軌道修正しているせいでなかなか先へ進まない。
早々に話に飽きて双子と狭い部屋を物ともせず走り回って遊んでいたルーだが、突如ピタリと動きを止めてある一点をジーっと見つめ小首を傾げたので、視線の先へ注意を向けるが特に変わったところはみあたらない。
「どうした?虫でもいたのか?もう少し静かに遊ばないとその内ゴアに拳骨を落とされるぞ?」
「…おい。ゴアって俺の事か?」
顔だけは凶悪犯だが、心に小さい者や可愛いものに目がなく、ときめく乙女を宿しているこの気のいい男を遠慮なく揶揄うと、目を眇めて睨まれた。
ルーがパッと振り向き小さな両手を広げてアルベルト男爵に抱きつき「ごあすきよ」と
笑顔で言えばその可愛さに胸を撃ち抜かれたのか、その場でトキメキ死をしかねないほど動揺して崩れ落ちる。
男爵を瞬殺したルーが、何事も無かったかのようにベッドに乗ってきて、先程見つめていた何もない箇所を指差すので、渋々魔力を通して見てみるとやたらと化粧が濃くド派手ドレス姿のな女が浮かんでいて、まるで恋する乙女の様に手を胸の前で組み目をキラキラさせて熱く男爵を見つめていた。
ポカーンと口が開いたが、見えたものを否定したくて、固く目を閉じる。頭を数回振ってからもう一度見るが、やはり同じものが見えてベッドに突っ伏す。
濃い!この世界で出会う者達がみんなすごくキャラが濃くって泣きそうになる。
知らない振りしてやり過ごそうとしたが、時すでに遅く…彼女は存在を認知された事を承知していたらしく、真横に移動してきて話しかけてきた。
「見えてるんでしょ?私の事!おーほっほっやっとだわ!私の手足となって動く駒が手に入ったわ!これでもうアイツらの好きにはさせないし、王子様のもとへ行けるのね!」
興奮して叫ぶように歌いながら踊る女に厄介事を押し付けられるのを確信し項垂れる。
ルーは未知なる遭遇にキョトンとしつつ、双子に向かって変なのがいると教えていた。
「アンタね…いい加減に現実を受け入れなさい。無視したって無駄よ!私はアンタを逃さないからね!だから、サッサと私のお願い通りに動いた方がお互いの為になるわよ?」
往生際が悪く、見えない振り、聞こえない振りをしているのに、そんなことは無駄とばかりにくるくる周りを飛び回り、オマケとばかりに化粧の濃い顔をグッと近づけて、底意地悪くニヤリと笑う女にイラッとして無意識に眉間にシワがよる。
「…はぁ〜最近本当に多いな…あんなに平々凡々な日々を送っていたのが嘘みたいだよ。普通の日々って実は希少だったのかもな…
で?何をさせたいんですか?」
とうとう根を上げて彼女に問いかけると、にやぁ〜っと笑って背をグッとそれして高笑いを始めるので枕を投げつけたくなる。
「最初っから素直にしていればいいのに〜そうしたら、可愛がってあげるわよ?坊や」
ルーの可愛い攻撃で撃沈していた男爵も目を覚ましたが、不機嫌丸出しの仏頂面に出くわしてワタワタしている。
「俺は!決して幼児趣味は無いぞ!信じてほしい!子供に性的な意味で興奮したことは一度だって無いんだ!」
「…ハイ、信じてますよ。そうでなくては決して双子をお預けしませんから…そうではなくて、はぁ〜こっちこそ信じてもらえるかわかりませんが、今ここにこの地に囚われた精霊がいて、助けを求められています。」
「…なんて?」
「ああ、私の王子様…どうかこの囚われの姫を救い出してくださいませ…」
夢見る様にアルベルト男爵を見つめながら、うっとりしている囚われの姫とやらに白目になりながら、事情を聞く。
彼女は、涙ながらに約200年に強力な魔力でこの地に囚われてしまったと語り出した。
本人にもどんな原理でそれなりに力がある精霊を縛りつけているのかが、わからないらしいが、どうやってもこの地から離れることができず、諦めていたのだが、たまたま見かけたアルベルト男爵一目惚れしてしまい、その時天啓が降りたそうだ…この男が自分を解放して救い出しくれる王子様だと!それからずーっとアルベルト男爵をストーカー…もとい熱心に追い続けていたらしい。
残念ながら男爵には、精霊の姿を見ることも存在を認知することもできないので、一方的な恋と本人も受けとめているが、自分の力は彼の為に使いたいと願っているのに、何故か意図しない所へ流れてしまうのが悔しくて仕方がないと歯噛みしていたそうだ。
そして、とうとう自分認知して声を聞ける下僕(俺)を手に入れた自分は無敵になったんだそうだ…
「さぁ、下僕よ。私を解放する為に労力を惜しまず働きなさい!私の全てはハン様の為にあるのです!それをいつまでも他の事に使われるのは我慢がなりません!」
精霊の言葉をアルベルト男爵に通訳すると、初めは意味がわからず呆けていたが、次第に何か府に落ちることがあったのか、腕を組んで悩み出すので問いただすと、この街の領主の話を知ってるか?と聞かれてハッとする。
そうだ…この街の領主は竜の英雄の従者の子孫で従者だった人物は精霊を授けられたと言われている。しかも、それだけで市民から信頼を得られている。
まさか…この精霊を縛りつけたのって他の共有者なのか?!
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