第5話説明求む 3
何となくいい感じでまとめたけど、知りたい事はまだまだたくさんある。
「戻る方法を衛藤さんは知らなくても最古の竜は知らないんでしょうか?時空を越える力を持ってるならできるのは?」
ヒントは無いのかと探ってみる。
「魂の共有者を探すために時空を越えるけど、いくつもの世界を適当に渡るわけじゃないんだ。魂の共有者は所謂GPS装置のようで、彼らはそれを目印にする。だから正確に転移できるし、戻る時はドラゴンは箱庭のエネルギーで構成されているからある意味世界そのものが目印で間違いなく帰還できるらしい」
「成る程、最初は俺と言う目印を頼りに世界を渡ってきたけど、俺を戻すには目印がないから無理ってことですね。」
「そう言う事、僕が積極的に探さなかったでけでもしかしたら元の世界に戻る方法も探せば見つかるかも…でも他の共有者が見つけたって話も聞かないしな」
新たな人物の登場にちょっとワクワクして身を乗り出す。
「その方達は他のドラゴンの共有者ですか?」
「そうだよ。4人とも大体同じ年代の地球から渡ってきたよ。その内会うと思うけど4人とも強い個性の持ち主だし、それぞれこの世界を謳歌してるから、元の世界に戻る方法を探したことがあるのかすら不明だけどね。」
(…どうやら戻る方法よりこの世界を満喫する方法を考えた方が健全のようだな)
あっさりと今後の方向転換をし、頭を切り替えて他のことを質問する。
「会えるの楽しみにしておきます。話は変わりますが、人化したドラゴンは他の人にもみえるんですか?冒険がどうとか言ってましたけどなにをするんでしょう。」
「人化すれば姿は普通の人にも見えるし、ドラゴンは成竜になると成長が止まり、見た目年齢は好きに変えられるようになる。幼竜のうちは幼児の姿のみだけどね。それと君達にお願いしたいのは、最近箱庭で多くの魔獣が出没して各地で被害が増大している原因究明。しかも自然災害も頻発して生物が住むには厳しい環境の地域がいくつもできたんだ。他のドラゴン達も動いているけど被害地域が多すぎて手が足りなくなっているんだ。」
衛藤が地図を取り出し印をつけながら説明をしてくれる。
簡単にまとめると、創造主が創ったというこの箱庭の世界には、大きな大陸と細長い大陸に大きめの島で構成されているようだ。
大きな大陸の中央に巨大な湖に囲まれた島があり本来のドラゴン達の住処は、その島中央にある山に造ったこの洞窟神殿になるのだが、最古の竜以外は好き勝手にあちこちに出歩いて滅多に帰ってこないし、中には1日もここでは過ごさずに外に飛び出したドラゴンもいるらしい。
この島は、最古の竜から自然と漏れ出す魔力と気によって純粋な濃いエネルギーに満ちている為、ドラゴン以外の生物は近づく事ができないが、島を囲む湖の周りは、深く豊かな森で覆われている。
そこはドラゴンの気の恩恵がもたらされた、いつでも実り豊な場所なのだが、人間は魔力の関係で森の深層へ不可侵とされている。
どうやら島に近い森の深層部はエネルギーが濃すぎて浴び続けるのは人間の基礎魔力では処理能力が追いつかず死んでしまうらしい。
だが、その為そこに順応した動植物は総じて魔力や知能が高く、彼等によって森の秩序は保たれている。
森の周りには、大小幾つかの人間が治める国が有るが、現在どれくらいの国が有るかは把握していないし覚える気もないとキッパリ明言された。
人間というのは、どこでも好戦的で領土を広げることに夢中になりやすいと呆れている。
エルフやドワーフ等の亜人、獣人らの村なども有るが彼等は総じて長寿の為か繁殖力が弱く、少数で部族ごとに纏まって暮らしていて、なるべく人間には見つからないよう、関わらないようにしているらしい。
どうやら昔、人間に関わって甚大な被害を被ったようで今だに警戒しているそうだ。
そして、魔獣というのは世界に蔓延るマイナスなエネルギーを凝固した魔素石を核に、実体を持った悪意の塊で澱んだ魔素だまりから生まれる。時には人間が触媒になるケースもあるらしい。
更に、戦争や飢饉などが起き大勢の死者がでると出没する魔獣の量とスピードが増す。
しかも、負の感情が強ければそれだけ厄介な魔獣が生まれ、魔獣に襲われることで更に大きなマイナスエネルギーが沸き起こりまさに負のスパイラルに突入してしまう。
魔獣を倒すには魔素石を壊すこと。
魔素石を壊すと断末魔と共に黒煙が吹き出し魔獣の体はヘドロのように形状を崩す、不快な臭いを放つどろどろの中から壊れた魔素石を見つける事ができる。
壊れた魔素石には純粋なエネルギーのみが残されていて、人はそれを加工することによって魔法の補助や魔道具の原料にしている。
ギルドで売ると資金調達になるよと教えてくれた。
「つまり好戦的な人間達が領土を争ってやたらと戦争しているせいで魔獣は増えるし、死者も増え挙句に国も疲弊して滅んでしまうってことですよね?自業自得ですよね?俺は手っ取り早く国ごと滅ぼせばいいんでしょうか?」
「そんな投げ槍にならないでよ。でも、本当にどうしようも無い場合はそれでもいいよ」
物騒な話をしていると、ドラゴン達が目を覚ます。
「話は終わったか?難しい事は何も無いだろ、さっさと行動して身体に叩き込めばいいんだ」
「魔法なんかはそれでいいけど、この世界のとこを知るのは大事だよ。この子は本能で理解しているだろうけど、将さんはこの世界にきたばかりなんだよ」
衛藤が窘めるが、ドラゴンはフンと鼻を鳴らす。
「今までの奴らは、来て早々に説明も録に聞かず喜び勇んで外に飛び出していったではないか。」
何をモタモタしているのかと、呆れ気味のドラゴンに、思わず目が点になる。
どうやら他の共有者はかなり、とめどない溢れる冒険心を持つ、行動力の塊だったらしい。
(きっと後先考えずに本能で動く人達なんだろう……でもそういう人の方が、状況判断に優れているからなんとかなるし、楽しめるんだろうな)
まさに、押してもダメなら更に押せ、なんなら叩き壊せの理論で力尽く進んでいくのだろうと、遠い目をしてまだ見ぬ同業者に思いを馳せる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます