第4話
なのに…ー
「失礼…します…」
リハーサル後、突然、彼に呼び出された
楽屋に入ると、
まずライブ衣装が目に入り、
その奥の鏡の前に座りながら
スマホを操作する彼がいた
訳もわからず
楽屋に入った私以外は、
メイクさんも衣装さんも
みんな最終確認に忙しく
動き回っている
恐る恐る彼に近づいて
「あの…」
お呼びですかー
と声をかけてみた
私の声に気づいて
ちらっとスマホ画面から
顔を上げてこちらを見たのに、
また元に戻してしまった
ん?もしかして違う!?
彼に直接呼ばれたわけではない。
同僚伝いに、〝呼んでる〝と
聞いただけだから…
確かに
中心スタッフでもない私が
楽屋に呼ばれるわけない!
考えれば考えるほど
間違いに思えてきて、
もう一度、誰が呼んでいるのか
確かめて来よう!と
早くここを立ち去ろうと
向きを変えて歩き始めた
足早に一歩踏み出したところで
「どこ行くの?」
背中越しに
彼の声が聞こえた
振り向くと、
さっきまで
座ってスマホをみていた彼が
立ち上がり、
私のすぐ後ろにいた
近い距離に
自ずと一歩下がって距離をとる
「えっ…と…呼ばれていると聞いて
こちらに来たのですが、呼んでない?
ですよね?ははは。
なので、仕事に戻ろうかと」
呼ばれてもないのに
勘違いして…
何か恥ずかしいーー
「呼んだよ。」
恥ずかしさに下を向いていた私は
彼の言葉に
思わず顔を上げた
「え?」
驚く私にもう一度言った
「呼んだよ。10分くらい前に」
本当だったんだ…
でもーー
「さっき声かけたのに…あっ」
〝さっき声かけた時は
確かに目が合ったのに
無視しましたよね?〝って心の声か
思わず漏れてきて
慌てて口を塞いだ
確信犯なのか
彼はただ
〝はははははは〝って笑った
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