第22話

引き取られた少年は名前を権田清と言った。少年を囲むように憲介、頼子、護と洋一郎が座った。

憲介が少年に聞くと神戸の元町に住んでおり、疎開先の亀山から一人両親のいる神戸にもどる途中だと言った。

洋一郎は年があまり変わらない少年が遠くの亀山から神戸へ行くと言う危険に満ちた冒険旅をしていたことを聞いて目を丸くして驚いた。

「とても自分にはできないよ。君は凄いね」

 布団の中で身体を横たえる少年に洋一郎は言った。

 少年は首を振ると憲介を見て布団から細い手を出して手を精一杯の力で握った。

「助けて頂いて・・ありがとうございます」

少年は涙声で言った。

 それを見て護が言った。

「きっと疎開先で何か事情があったのだろう。それでなければ、こんな年端も行かぬ少年が危険な長旅にでるなんて」

 憲介が頷く。

 頼子が少年の髪を優しく撫でた。

「きっと、お父さん、お母さんに会いたかったのよね。それで頑張ったのよね」

 少年が頷いた。頷くと顔をくしゃくしゃにして泣きだした。

「もう大丈夫だ。清君、暫くここに居て養生しなさい。あとで目の痣と傷も医者に診てもらおう」

 憲介はそっと少年の手を布団の中に戻した。

「私は会社が神戸だ。体力が回復すれば一緒に連れてゆこう」

権田少年は泣き出した顔で何度も頭を下げた。

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