第13話

 そんな二人の会話を哉も聞いていた。

 寝入っていたが途中から二人の声が耳に入り何となく聞いていた。

 新島が護の問いかけに答えたことには少し心の中で驚いていた。

 研究所ではあまりにもその研究心の強さで誰とも意見が合わず、孤立していた。そして敵とみると誰構わず攻撃し、相手の息の根を必ず仕留める辛辣さを持っていた。

 そんな新島が弟の質問に答えるだろうかと聞いていたが、意外にも答えた。

 それだけでなく自分自身をも知らない心の内を新島は弟に言ったのだ。

(人の心の内は複雑で案外分からないものだな)

 そう思って寝返りをした時だった。

 弟の「あれは?」と言う声が耳に聞こえた。

「あれは何?外が赤く染まっている」

 その声に哉は跳ねる様に身体を起こした。

 その時には既に新島は縁側に居た。

「まずい!」

 新島がそう言う言った時、一斉に大きなサイレンが鳴り響いた。母屋の奥から慌ただしい足音が聞こえてくる。

「皆起きろ!米軍の空襲だ」

 その声が聞こえた時、大きな爆撃音がして建物が激しく揺れた。

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