合紋シュトルーデル

「...また白い部屋ですか」

 ヤァ、とぽっかり口を開けて広がる空間の中には、一台のスマートフォンの乗った机。

 裏や脚立の周りなんかも確かめてみたが、机には何の仕掛けもない。なら、このスマートフォンにここから出る術があるのだろうと、私はスマートフォンを手に取り気づく。...これ、上条先輩のだ。張り紙が一つされていて、それ以外のことは全くと言っていいほど判らなかった。だから、私はそっと張り紙を見た。紙には『このスマートフォンのパスワードを当ててみてね!当てられないと普通に出られないしデータもおじゃんになるよ!』とある。

「...悪趣味な」

 と言いつつ私の口角はちょーっと上がった。あの先輩刑事のパスワード...ちょっとどころかかなーり気になる。ためらいなく私は紙を剥がして、ホームボタンを押した。

「まずはジョブからかなー...私のパスワードから!」

 元気よく0906と打つ。ラグがあるようで暫く動かない。

「まぁ、私のパスワードってどっかの誰かさんの誕生日なので、先輩のな訳が...って、え...?」

 開く。ホーム画面が見える。ロック画面も彼女の部屋なのにホーム画面も彼女の実家ってどういうことだ、じゃなくて。

「...へぁ?」

 襲いかかる盛大な疑問。頭の中がパニックになったまま、ガバリと私はデスクから起き上がった。時刻は深夜2時。眠い。じゃなくて!

「...何で先輩のスマホの暗証番号が頼久さんの誕生日なんですかぁああああああああああ!?」


「...」

 ヤァ、とぽっかり口を開けて広がる空間の中には、一台のスマートフォンの乗った机。むくりと起き上がって服についた埃を払う。

 裏や脚立の周りなんかも確かめてみたが、机には何の仕掛けもない。なら、このスマートフォンにここから出る術があるのだろう。俺はスマートフォンを手に取り気づく。...これは、猫宮の携帯だ。張り紙が一つされていて、それ以外のことは全くと言っていいほど判らなかった。だから、俺はそっと張り紙を見た。紙には『このスマートフォンのパスワードを当ててみてね!当てられないと普通に出られないしデータもおじゃんになるよ!』とある。

「...悪趣味な」

 ぼそりと呟けばスマートフォンが『え?上条先輩は私の携帯のパスワードすら当てられないんですか?』と持ち主のいつものしたり顔を向けてきたような気がして、ついムキになる。

「...上等だ」

 こういったのは弟の領分だが、俺にも出来るはずだ。きっと多分おそらく。

「まずはそうだな...自分の携帯のパスワードから、だろうか」

 不安に思いつつも0906、とゆっくり入れていく。ラグがあるようで暫く動かない。

「...まぁ、まつりの誕生日に設定してあるからな。まさか猫宮の携帯のパスワードが...」

 開く。ホーム画面が見える。おい待てこのピアスと指輪の写真は。何だこのロック画面は。海か。デートか。デート先なのか。いや、問題はそこではなくてだな、

「...は?」

 襲いかかる盛大な疑問。頭の中がパニックになったまま、ガバリと俺はデスクから起き上がった。時刻は深夜2時。眠い。いや、ではなくて!

「何故猫宮の携帯のパスワードがまつりの誕生日なんだ...っ!?」


 黒髪長髪の二つの影が不意に大きくくしゃみをした。カフェから、神社から、邪神の笑い声が聞こえる、かも知れない。


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