魔女っ子シュガー

 君の学校に今日は転校生が来る日らしい。君はワクワクとして教室へ駆け込むだろう。

「ショウ!今日の転校生、女だってよ!」

「しかもしかも、聞く限りすっごい美人なの!」

「...へ?そうなの?」

 聞いてなかった、そんな事。君は心の中で小さくぼやく。

「まあいいから待ってろって」

「いい子だったらいいなー」

「かわいい子ならおれは全然いいんだけどなー」

 好き勝手騒ぐ友達を傍目に、君は席に座る。退屈なホームルームを終えた後、先生がみんな起きなさい、と声をあげる。

「今日は転校生が来てます。結ちゃん、どうぞ」

 ふわり。そんな幻覚が君たちには聞こえた。ピンクの色をした麗しい花を背負っているような雰囲気。フリルのついた素敵な黒のワンピース。小さくかわいらしい背丈。白髪ツインテールに赤いリボン。そんな女の子の具現化みたいなその子は、アイドルなんて目じゃないくらいにキラキラと輝いていた。

「かみじょうゆいか。結花って書きます」

「よろしくお願いします」

 鈴を転がすようなかわいらしい声が響く。君はその声にくらりとしてしまい、そのあとのことはもう覚えていないだろう。


 気づけばもう休み時間だ。かわいらしい転校生、上条結花はニコニコと笑いながら色々な質問に答えている。ふとした、キャピキャピとした女子の「私と友達になってくれない?」という台詞が聞こえた。次の瞬間、あたりは一気にしん...と静まり返る。

「私と友達になっても、生きててくれるなら、いいよ」


「...は?」

「まじ意味わかんない」

「どういうこと?」

「お前と一緒にいたら死ぬってのかよ」

「いやだ、冗談言わないでよ」

 ざわつく教室内に、止せばいいのに結花は正直に、凛とした表情で答えた。

「冗談じゃないよ。私といると、たいくつはしないけど死んじゃうかもしれない。それでもいいの?」

「やに決まってるでしょ!プッツン女!」

 ヒスを起こした女の子は、ここのクラスで一番発言力のある子だ。大変なことになった、とあなたは思うだろう。何せ男子まで若干引いている。その中で一人、手をあげる者がいた。

「おれは別に死なないからいいぜ」

 手を挙げたのは白崎という男子だ。他にもハキハキとよく話す木琴の上手な女子なんかも手を挙げた。

「大丈夫。私も、死なないから」

「...ありがとう。今はそれ、信じるね」

 ふわりと花のような笑顔が咲いた。そこら中に、スパイシーで甘い、おかしな匂いがするだろう。君はその匂いに誘われた。...ああ、転校生は魔女なのかもなぁ。そんなことを頭の片隅で思いながら、君も手を挙げるだろう。

 桜が落ちて木が緑になっていく、そんなある日のことだった。



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