海が太陽のきらり

紺藤 香純

第1話

 「今日ママンが死んだ」と嘆いたところで母親は死ぬわけではなく、むしろ、数年ぶりに再会した姑と“ガールズト-ク”に花を咲かせている。

 朝からうるさい。海斗かいとは眉をしかめた。女性陣の目が離れた隙に、フライパンのウィンナーを指でつまむ。ぽいっと自分の口に入れると、一瞬で口の中に熱が広がった。

「こら、海斗! お行儀が悪い!」

 目ざとい母に見つかり、海斗は肩をすくめる。

「申し訳ありません、お義母かあさん。しつけが行き届かず」

 母親から見たら姑――海斗から見たら祖母――は、いいのよ、と朗らかに笑う。

「育ち盛りだもの。お腹がすいたんでしょう。ご飯にしましょう」

「海斗、おじいちゃんとお父さんを呼んできて」

 母親に命じられ、海斗は家庭菜園の世話をする祖父と朝寝坊の父親に声をかけた。

 だし巻き玉子、ウィンナー、夏野菜、わかめと豆腐の味噌汁、焼き魚で朝食にする。

 昨日から始まった大人都合の連休に「不条理だ」とか「太陽のせいだ」という言い訳が通じるはずもなく、海斗は名も知らぬ魚を口に運んだ。

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