-気弱な神様とその補佐官達-

ど、どうも。神をやっている者です。


名前?いや、そんな、名を名乗るような者じゃありませんよ僕は。


どうしてもというなら駄神とでも呼んで下さい。はは・・・。


「神様。手が止まってます」


「あ、うん、ごめん・・・」


実は今僕のところはちょっと慌しい事になっています。


それというのもこの前の会合でまた変な頼まれ事をされたから。


「どうして引き受けてしまったのですか?」


「え、だって困ってるみたいだったから・・・」


「はー・・・またそうやって勝手に決めて」


「ご、ごめん・・・」


今日も補佐官の子から厳しい言葉が飛んで来ます。


僕のところの補佐官は沢山います。


それぞれ役割と持っていて分担して作業に当たってくれる優秀な子達です。


とっても頼もしく思えます。


人数は・・・もう両手両足じゃ優に足りないぐらいいます。増えたなぁ・・・。


そしてその多くはこの世界の生まれではないです。


経緯は様々ですが、別の世界から移民として来た子達です。


「今回は受け入れるのではなく派遣するのですか」


「うん、そうみたい。場合によってはあっちから研修として来る子もいるって言ってた」


「選出はどうするのですか?」


「うーん・・・内容は体制改善って言われたけど、それだけで内情把握が出来てないから、とりあえず調査力の高い子に行ってもらおうかなぁ」


「わかりました」


「あ、本人が嫌っていうなら無理にとはいわないからね?」


「神様ぁーそれじゃぁ行ってくれる子も行ってくれなくなるじゃないですかぁー」


「え、あ、そうなの?うーん、じゃあ行ってくれた子には何かご褒美あげるってのはどうかな?」


「ご褒美!?」


一気にみんなの目の色が変わりました。


「なんでもいいのですか!?」


「な、なんでもは困るけど、可能な範囲ならいいよー」


そう答えると仕事場内のボルテージが一気に上昇しました。


そ、そんなに盛り上がるの?


一応みんなには普段から満足してもらえてると思っていたのだけど・・・。


「では、まずは現状調査を行い、その後状況に応じて適宜最適な人材を派遣するという形で宜しいですね?」


「うん、おねがい」


うーん、こういう事は初めてだけどきっとみんななら上手くやってくれると信じて送り出そうと思います。




「派遣かぁ・・・」


「不安なの?」


「不安っていうか、どれぐらいの期間になるのかなって」


「あっちの状況次第でしょ。貰った情報を見た限りだと正常化するまで時間かかりそうだけど」


「それなのよねぇ。体が持つかどうか」


「あー・・・貴女もそのクチでこっちに来たんだったっけ」


「そうなの。貴女もそうでしょ?」


「ここで補佐官やってる子は大体そうね。私も同じ」


「うちの神様ああ見えて凄いからね」


「噂を聞いて来たけど、ホント移民してよかったと思うわ」


「うん。だから長期になるとね・・・」


「そうねぇ。そこはちゃんと考慮して予定組んでくれると思うけど」


「だといいなぁ」


「ちなみにご褒美は何頼むつもり?」


「貴女が教えてくれたら教えるわよ」


「私?私は少年の姿になって貰って主導権握るの。いつも翻弄されっぱなしだし」


「少年の姿だと衰えるどころか更に強化されそうな気もするけど」


「それはそれでいいわね。必死になるのがいいのよ」


「あー・・・確かにそれはいいかもしれない・・・」


「それで?貴女は何を頼むの?」


「分身して貰っていっぺんに相手してもらおうかなって」


「・・・貴女無謀にも程があるわよ」


「いいじゃない、一度ぐらい体験してみたいと思わない?」


「そういえば複数相手にされた事ないわね。いつもこちらが複数だし」


「そうなのよ。この前会合に行くことあってそういうのがあるって聞いて」


「なるほどね。あ、それじゃ少年の姿で分身して貰って一緒に相手してもらうってのはどう?」


「貴女天才!それでいきましょう」




「・・・ふふ」


褒美と聞いて仕事場内の各所でご褒美の話が盛り上がってる。


ちゃんと手は動かしてくれているのでとやかく言うつもりはないけど、無欲な欲の塊みたいな内容で笑いがこぼれる。


ここも賑やかになったなぁ。


昔は色々と大変だった。


神様は体力精力共に無尽蔵に近かったから相手する私達が毎日意識を失って寝てた。


ある時会合でその話をしたらそれが各世界の欲の強い子の耳に入り、移民が増えた。


おかげで今はローテーションを組んで臨めるようになった。


いや、別に嫌いとかじゃないんだけどね。


むしろ私もする事自体は好きなんだけど、さすがに毎回力尽きてるとあの神様も気にしちゃって全力で相手してくれなってしまうのが嫌だっただけ。


今は回数こそ減ったけどその分濃密な時を楽しめて私も満足してる。


「こんな感じでいいかな?」


「んー・・・こことここがよくないですね。この子が可哀想です」


「あ、そっか。直して来る」


神様が予定の確認をしてきたので改善点を示すと頷いて戻っていく。


うちの神様は基本的に物事を断る事をしない。


ただ出来ないだけかもしれないけど、頼まれた事に対して常に全力で当たってくれる。


みんなそれをわかっているから無茶な事は頼まない。


もし頼むような人が居れば私達が代わりに断るようにしている。それが他世界の神様であっても。


今回ちょっと特殊な話だったけど、頼んできた神様もちゃんとうちの神様を理解した上で頼んできたから断る事はしなかった。


ただし、神様には文句は言う。


だって相手してもらう機会が減るのは嫌だし、こういう事をしないと相手してもらう時全力を出してもらえないからアピールはする。


普段はあんな感じで気弱だからすぐ謝っちゃうけど、直しはしない。


うちの神様はそういう人だ。


さてと、今日の私の仕事は終わったし、神様の様子を見て明日に備えて体調管理しておかないと。


明日は私が相手をしてもらう日。


ふふ、溜まった欲求を思いっきりぶつけて受け止めてもらおう。

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