ウォーターベッド

オアシスの街でイベントが行われている。


参加者は青と赤の腕輪をそれぞれ男性と女性が着けて行うもので、参加者が配布場所に集まって次々参加している。


イベント内容は男女でくっついて腕輪が光れば景品がもらえるという単純明快なもの。


このくっついているという状態が肌接触でないといけないという点がこのイベントのポイントだ。


しかも接触面積に応じて腕輪へ溜まるポイントが変動するという。


面白いイベント考えるなぁ。


効率だけを考えれば裸で抱き合うのが一番いいのだろうが、ここはオアシスの街で暑い。


それを続けるのはなかなかに難しい。


水風呂に入りながらやればいいかもしれないが、そこまでやる程の景品でもない。


つまり程々に触れ合いながら期間を過ごすのが良いみたいだ。


街では色々な男女の様子が見られて面白い。


腕を組んで買い物したり、初々しく手を繋いだり、水着になってオアシスに飛び込もうとして叱られてる人もいるな。なにしてんだ。


勿論末裔夫婦も参加している。


この二人に関してはいつも一緒にいるるからこのイベントは日常的すぎるんじゃないかな。


いや、そうでもないな。


どうするのがいいか色々試しているようだ。


・・・だからっておんぶで歩くのはちょっとどうかと思うぞ?


あーあー真似する人出てきてるし。


あ、背中に胸が当たってこれはこれで良いと。そうか、それはとてもよくわかる。


そうこうしているうちに日が暮れる。


望遠になる俺の画面。知ってた。やっぱりそうなるよな。チクショウ。


しょうがないのでこのイベントの目的について考える。


単に男女の仲を良くするに収まらないのがオアシスの街の凄いところだ。


例えば男女でくっついているだけでは暇になるので外に出て買い物なり食事なりして経済効果が生まれる。


トラブルが起きれば解決に走り、何が原因だったかなどの情報が手に入り今後の斡旋所などの運用に活かせる。


他にも色々なところでプラス効果が出ているようだ。


そしてこうやって親睦を深めた男女の一部が何処へ行くかといえば南の密林だ。


密林へ行き来する人が増えれば自然とオアシスの街へ入る密林の品が増える。


密林の品が増えればそれを求めて人が来る。街が潤う。更に活気付く。


そんな好循環が生むのがこのイベントの目的ではなだろうか。考えすぎかな。


ま、なんにせよ仲良く楽しくしている様子を見るのはいいものだ。


信者も増えることだし、定期的にやってほしいなー。




今日は休養日ということで家でゆっくりする事になった。


なのだが・・・。


「なんで離れないんだ?」


サチが家に着いても腕を放してくれない。


「こういうのをやってみたいと思っていたのかと」


あぁ、さっきのオアシスの街のイベントを見ていたからか。


「あれ肌の接触面積が大事らしいぞ」


「む・・・」


さて、どう出るかな?


今日何するかは特に決めてないけど、さすがに帰って早々頑張るのはどうかと思うぞ。夜は頑張るけど。


俺の腕を掴んだままパネルを開いて服を探してる様子。


「んー・・・ちょっとお風呂に移動しましょうか」


水着の一覧を見て少し考えた後にそう提案してきたので黙って付いて行くことにした。


何するんだろう?




風呂場に行くと水着に着替えさせられた。


「ちょっとそこの椅子に立って待っていてください」


同じく水着に着替えたサチが壁端にある長椅子を指して言うので言われたとおりにする。


俺の隣にサチが立つと念で大きな水球を作り出した。


あぁ、今日は温水プールするのか。たまにはいいな。


でもそれなら別に風呂場じゃなくてもいい気もするが・・・え?ちょっと?サチさん?水球大きすぎませんかね?


水球が地面に落ちると浴槽は勿論、普段歩いている場所まで一面水浸しになってしまった。


しかもこの水、普通の水じゃないな。


なんかこぅゼリー状というか・・・あぁあれだ、下界のスライムっぽい質感してる。


「水面に足を乗せてみてください」


「え?どういうこと?」


「いいですから」


言われるがまま恐る恐る水面に足先を付ける。


お?お?なんだこれ!?乗れるぞ!


「そのまま乗ってみてください」


ゆっくりと体重を移して乗ってみる。


「お、おぉ・・・おぉ!」


足を動かすと水面がふよんふよんと動いて柔らかな感触を返してくる。楽しいぞこれ。


「大丈夫なようですね。もう少し水量を増やします」


サチも水面に乗ると水面が次第に上に上がっていき、風呂場の半分ほどまで水で埋まる。


「これ座っても大丈夫か?」


「大丈夫ですよ。寝そべっても水に沈んだりしません」


そう言われたので思い切って寝そべってみる。


おぉ!これはいいぞ!


水の程よい冷たさがいい感じに気持ちいい。


しかも表面が滑らかなのでちょっとした重心の移動で体が滑って楽しい。


だからと言って氷みたいに滑り続けるわけじゃなく、足や手などで一点に力を込めると止まる。


うーん、不思議な感覚だ。


表面は普通の水なのに手の厚さぐらいまでの水深になると撫でられる程の抵抗が出来て、強く押すとふよんふよんする。


「面白いなーこれ」


「気に入ってもらえたようでなによりです」


これ学校とかでやったら子供達大喜びするんじゃないかなぁ。


「思いつきで試してみましたが上手くいってよかったです」


「・・・ん?ちょっとまて。という事は俺に先に行かせたのはどういうことかな?」


「・・・ソウは泳げますし」


目を逸らすんじゃない。


「へー、ほー、ふーん・・・」


うつ伏せになって膝を曲げて足の裏を近くの壁に当てて一気に蹴る。


「なっ!?」


「ははは!捕まえたぞ!悪い奴だ!こうしてくれる!」


「あっ!ちょっと!?やめっ!?ごめんなさい!謝りますからくすぐるのは!?あはははは!」


やっぱり悪い子にはお仕置きしないとな。うんうん。




「・・・んぁ」


「起きましたか?」


「うん」


どうやらこの不思議な水の感触が心地よくて寝てたようだ。


気付いたらサチが俺の上に居る。


背中側は冷たく、胸側は温かくていい感じだ。


「どれぐらい寝てた?」


「結構な時間寝ていましたよ」


「そうかー」


心なしかサチがツヤツヤしてる気がする。


ふむ、このツヤツヤ具合は水で濡れてるからとかじゃないな?


・・・そうか。まぁいいけど、このままくっつき続けてると復活するぞ?いいのか?


いいのか。なかなか挑発的な視線をするじゃないか。後で覚悟しておくように。


今?今はまだ寝ぼけててぼんやりしてるから頑張るのはもう少し待って欲しい。


起きる直前はあんなに元気なのに?ちょっと何言ってるかわからないんだが。


あ、処理済み。そういうことか、ありがとうございます。


気付けば水位も大分下がってきているな。


前に庭で水球プールを作ってもらったときもそうだったが、念で水を作り出すと揮発が早いようだ。


詳しい事はよくわからない。今度時間がある時に教えてもらおう。


うーん、頭は大分起きて来たが体を動かそうという気が起きない。


家の布団もかなり上質だがこれの寝心地はそれとはまた違う良さがある。


まぁいいか、もうしばらくこのままでも。


サチがまだくっつく遊びを続けていたいみたいだし、満足するまで付き合おう。




・・・まさか寝る時間まで満足しないとは。


風呂場の水が無くなり、改めてお湯を入れて普通に風呂に入っている間もそのあと夕飯を食べる時も何する時もサチは必ず俺の肌を触れていた。


意志が強いというか妙に頑固なところがあるからなぁ。


仕方ないので寝る前に思いっきり頑張った。


神の身体の回復能力も利用した。


それでも結局力尽きて気絶するように寝るまでサチは触れてる遊びをやめなかった。


まったく、凄い奴だ。


もしかすると無意識にそういう欲が溜まっていたのかもしれない。


頑張ろうと思えばこの身体だからいくらでも頑張れるが・・・。


いや、やめよう。


こういうのはたまにやる方がいい。


慣れてしまうと更に次を求めてしまうのが人だからな。


これから長く生きるんだから小出しにするという事も学ばないと。


まだまだこっちの世界に馴染むには時間が必要そうだ。

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