第11話 エピローグ
「まあ報奨金からどれだけ引かれようが、俺達にはこれがあるからな!」
昨夜賞金首の砂上挺から強奪した金品や武器弾薬や食糧を前にしてヨハンは高笑いしている。どれだけ理不尽に修繕費をさっぴかれようが強奪物があるので大した痛手ではない。
しいて問題点を上げるなら。
「だが量が多すぎて全部は積めないな」
スコッチの指摘通り、目の前に積まれた戦利品を全てバイクに積むのは不可能だ。一応バイクで牽引する荷車はあるが、明らかに積載オーバーである。
「ペンギンダーで何とかなりません?」
「何をどうすれば何とかなるんだ」
ペンギンダーに物を詰め込むスペースは無い。
「仕方ない、必要な物だけ選り分けて他は捨てるか。メル、手伝ってくれ」
「はーい」
人手がいると判断したヨハンは宿に戻ってメルを呼んでおいた。メルの体調は既に良くなっているらしく、朝ご飯用に買っておいたサンドウィッチを与えると美味しそうに食べていた。その後メル用の日用雑貨を買い揃えてから件の隠し場所へ赴いた。
一応昨夜の大捕物はメルも把握している。
「病み上がりだから無理はするなよ、ほんとに大丈夫か?」
「はい! すっかり! ところでいらない物は売ったりしないんですか?」
「そうしたいが、あの町で俺達の人相は完全に割れてるからな、このタイミングで売り払えば奴らから奪った物だとバレるだろ」
「バレたら何か問題あるんですか?」
「法的に問題は有るが俺的には問題無い、ただ町の人達が俺達だけ強奪物でウハウハしてるのを妬んでやっかんでくるかもしれないし、下手すると襲ってくるかもしれないだろ? それにここから本音だが、盗賊相手でも強盗は違法だから保安官がでてくる。そうすると色々めんどくさい」
「あぁ、つまり私は今犯罪行為の幇助をさせられてるわけですか」
「そういう事」
「私、授業をサボる以上の悪いことするの始めてです」
メルが自分の中の罪悪感を押し出すようにはぁ〜と深いため息を吐いた。
この先荒野で生きていくとなれば、きっと何度も経験する事なのだろう。これぐらい図太くなければ荒野の星では生きていけない、地球からやってきた少女は早くも自分の中の倫理観と戦わなければならなくなった。
「それじゃ始めっぞ! ちなみに宿はチェックアウトしたから今夜は野宿だぜ」
「えぇ!」
「お金も節約しなきゃだし、バレる前に町を離れたいから終わり次第出発するつもりだし」
とどのつまり後ろめたいからである。
「とにかく始めましょうか」
「おー」
こうして戦利品の区分が始まった。
念の為スコッチには見張りをしてもらい、実作業はヨハンとメルの二人で行う。 火薬類は危険なのでこちらはヨハンが、メルは食糧の選り分けを行う。
選り分けといってもやる事はバイクや荷車に積み込むだけなので一時間もかからないだろう。
「えっと加工品優先で食材はハネるんですよね」
「でも野菜類はなるべく確保しといて、貴重なビタミン源だから。肉はむしろ干し肉以外全部捨ててもいいかな、現地調達すればいいから」
「わかりました」
ヨハンに言われた通りメルは加工品と野菜を荷車に積み込んで行く。肉はあえて無視すれば直ぐに終わるだろう。
食糧の方は問題ないが、武器弾薬をチェックしてるヨハンは時間が掛かるかもしれない。何せ食糧よりも弾薬の方が多いからだ。
「よおし終わった」
「えぇっ!?」
メルの予想に反してヨハンの選り分け作業はおそろしく早く終わってしまった。
「あんま武器いらないしな、俺とスコッチが使ってる銃の規格に合う弾薬を確保するだけだから。新しい武器といえば昨日使ったライフルぐらいだな」
「な、なるほど」
武器は多ければ多い程いいわけではないらしい。その後は食糧の選り分けをヨハンとメルが二人で行って終わらせ、スコッチを呼んでから出発する。
出発する前にヨハンは焚き火を用意して煙を高く登らせた。メルが理由を尋ねると、「こうしておけば誰かが気付いて残った食糧と弾薬を取りに来るだろう」との事、確かにあのまま放置するのは忍びなかったのでこれは名案だった。
ちなみに金品の選り分けは行わなかった。
何故なら、元々そんなに数が多くなかったので全て持って行くことにしたからだ。
「多くても全部持って行きましたよね?」
とメルが尋ねると。
「「当然!」」
とヨハンとスコッチが同時に返した。
ある意味予想通りの返答にメルは乾いた笑みを零すしかなかった。
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