第4話 川崎莉亜
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約千八百万円。
これが、中学生であるあたしが一月に稼ぐ金額だ。
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川崎莉亜は、お金持ちだ。このことを知っているのは川崎莉亜しかいない。中学生である彼女がお金持ちであり、そのことを本人しか知らないということは、真っ当な方法で手に入れた金ではないことは明らかだ。
彼女は放課後、いつも一人で帰っている。
校門から出た後、右に行く日もあれば、左に行く日もある。学生なら、たまに寄り道してるくらいの思われ方だが、彼女はいつも寄り道している。
今日は左、携帯の画面をチェックし、目的地へ向かう。
目的地へ近づくと、近くのコンビニにより、トイレで着替えをはじめる。
「今日は、三件、か…多いな」
そう言った彼女は、着替え終わると、近くのスーパーへと言った。
そしてスーパーの近くに立っている男に声をかける。
「いーあーるおーさんですか?」
「おお、ということは、クマクマさんですな?いやぁ、まさか、本当に中学生の子だとは思わなかった」
「もう、あたしを見るまで信じなかったんですか?」
あー、くせぇ、このおっさんまじでロリコンかよ。デブだし、髭とかも適当にはやしてにきびだらけ。金もらえるヤツじゃなかったらぜってえ話しかける機会ねぇわ。
「それより、早く行きませんか?あたし、昨日からずっと楽しみにしてたの」
「お、おう。いやぁ、まさかこんなに可愛い子に期待されるなんて、俺もまだ捨てたもんじゃねえな」
んなわけねぇよ。お前はただの財布だわ。
「別に見た目が全てじゃないですよ。人にはそれぞれ見えないよさがあるじゃないですか」
「分かってくれるのはクマクマさんだけですよ。はっはっは」
その二人は、やがて別の場所へと消えていった。
しばらくして、彼女は最後の客の相手を終わらせて帰るところだった。
「うし、今日は二十五万。まあ、稼げたな」
晩御飯も相手の人達に奢ってもらい、機嫌をよくさせ、欲しかった服も買ってもらえた。
「やっぱおっさんチョロいわ」
時間は21時。あとは家に帰るだけだ。
そうして家に向かったが、前から人が近づいてくる。その人影は見覚えがあった。だんだん近づくにつれ、顔がはっきりしてきた。
「おう、川崎じゃねぇか」
あたしに声をかけたのは、八坂景。ということは、どうなるか分かっている。
「じゃあ」
あー、これは今日の稼ぎとぶな。
そう思った川崎は鞄の中に手を突っ込み、金を出そうとした。
だが、
「気をつけろよ、夜危ねぇから」
「…は?」
思わずアホみたいな声で反応してしまった。
「んぁ、何?」
それに反応する景。
「…や、別に何でもない」
それだけ言って、彼の気が変わらないうちに足早にその場を去った。
今日は金を取られない?何でだ?あいつのターゲットにならなかったのか?
今日を生きた感じがした彼女は、拍子抜けながらも、家に帰った。
今日は家には誰もいないはず。そう思っていた彼女は、警戒もなく家に入った。
「おう、莉亜」
だが、そこには他の家庭では一般的に、父と呼ばれる人がいた。
莉亜は慌てて外に出ようとするが、首をつかまれる。
「おいおい、逃げんなよぉ。お父さん悲しくなっちゃうぞぉ?」
「おめぇみてえなやつが父親語るんじゃねぇよ!」
莉亜は殴られた。
「どうやらまだ、教育が必要みたいだなぁ」
そう言った父は、莉亜の服を破り散らしていった。
「やめろ!クソ野郎!離せ!」
だが、聞く耳を持たない彼は、娘を娘としては見ていないかのようだった。
その後、彼は満足したのか、ボロボロになった莉亜をその場に放置して、タバコを吸いながら外へ行った。
幼少期からこんな扱いを受けてきた莉亜は、人を信用していなかった。
今日は、アイツのターゲットにならない代わりにあいつのターゲットになった。ただ、それだけのことだ。
やがて消えゆく意識の中で、静かに思う。
七日後、てめぇらを…。
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