第10話
約束の場所には20分ほど早く着いた
8時になったとしても
兎沙が現れることはない
29歳で僕を置いて
逝ってしまったのだから
馬鹿げているかもしれないけれど
こんな時 霊能者とやらは
何か感じるのだろうか…
兎沙 君は今ここにいる?
情けないことに
僕には気配を感じる力など
無いようだ
川沿いをぶらぶらと南に歩いた
現実は 周りに溢れている
ジョギングをする人
犬の散歩をする人
目的地に向かって歩いている人
数人で雑談をしている人
夏休みの子供たち
、、、、、
ありふれた朝の風景
僕だけが異次元のように思われた
途中 階段を下って 川辺に降りてみる
水面は太陽に照らされて
キラキラと輝いていた
35年間 兎沙を忘れていた僕を許してほしい
僕は65歳のこんなおじいさんになってしまったよ
間違い電話から始まったこのストーリーは
君が作ったのかい?
この約束のために…
35年前 僕の記憶から兎沙を消したのは
兎沙 君だったのかい?
僕を救うために…
長い時を経て 再び 君は僕の心に戻って来てくれた
ありがとう兎沙
セミの声が聞こえる
きょうも暑くなりそうだ
街はいつも通り 動き出している
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